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太刀・刀

大小揃
 

刀/於江府加藤長運斎綱俊 嘉永二二歳八月吉日
脇指/於江府長運斎綱俊 嘉永二二歳八月吉日

商品番号 :B-044-K-091+108
 

江戸後期(幕末) 武蔵 特別保存刀剣 白鞘

2,900,000円

刀/刃長:66.8 cm 反り:1.9 cm 重ね:0.80 cm 脇指/刃長:46.0 cm 反り:1.0 cm 重ね:0.66 cm

[大/刀]
 
体配
本造、庵棟、中心は生で孔は一つ、鑢目は筋違に化粧。
地肌
小板目肌が細かく良くつみ杢目肌となる。指裏の鎺元あたりに流れ心の小板目。鎬地は柾目に流れる。
刃文
匂口は締り心で匂本位の五の目に小丁子乱となり、刃縁は緩やかな五の目風に冴える。
鋩子
弯たれ気味に直ぐに入って小丸。返は浅目。
[小/脇指]
 
体配
本造、庵棟、中心は生で孔は一つ、鑢目は筋違に化粧。
地肌
小板目肌が細かく良くつみ総体に杢目肌となる。鎬地は柾目に流れる。
刃文
匂口は締り心で匂本位の五の目に小丁子乱となり、刃縁は緩やかな五の目風に冴える。指表に金筋・砂流風の所作が出る。
鋩子
弯気味に直ぐに入って小丸。返は浅目。
備考
長運斎綱俊、結構名の知れた刀工です。綱俊をはじめ大慶直胤、細川正義、加藤綱英・・・名だたる刀工達が名を連ねる水心子正秀の門、恐るべしです。大小揃った本作も、綱俊が同門と競い合った技が込められた優品です。まずは小板目をよく詰んで杢目肌となった精美な地金。そこへ高低差のない緩く弯れた五の目の刃縁が冴えます。良い研のせいもあるでしょうが、稟として厳ついところもなく美しいラインとなって優雅です。そして、これまた刃との対比が冴え渡る丁子乱が深々と焼かれ、まるでキャンバスに描かれた絵画のようで、匂口は締り心で破綻なく切先まで続きます。それぞれの地金・鉄質が異なる光の色彩を放っているようで、鎬地、刃部、刃文、匂口、刃先部・・・区別がまちまちですが、5色に分かれた抽象画といったら・・・少し褒め過ぎですか(あまりイメージで伝え過ぎてはいけませんね)。刃文の解説をするのにこれほど判りやすい作も珍しいというか、ぜひ写真ではなく実物を経眼してほしい一振です。
姿は幕末頃の典型作ではなく、少し細目で反があり、どちらかといえば寛永頃のやさしい姿に近く、復古刀を唱えた水心子の門人ならば室町期の姿を倣ったとも考えられます。そして大小揃っている点からは、注文打と言って良いでしょう。

幸運にもバラバラ事件に遭遇しなかった綱俊の大小

本作、見ての通り刀と脇指の大小揃です。取り合わせの大小ではありません。同じ刀工が個別に作った作の取り合わせでもありません。銘と年紀が示すように最初から大小として作られた、いわば双子の兄弟(いや姉妹でしょうか)です。だからといって別に驚くことでもありません。江戸期のおいては大小として作られた刀・脇指はそれなりにあったことでしょう。それが現在では、現存するこの手の大小は、指定品や博物館等以外ではほとんど見かけません。原因は・・・そうです、バラバラ事件です。刀剣商が個別に売った方が高く売れるからと、方々に散らばってしまいました。古びて壊れた柄から目貫や縁頭を外してバラ売りするのとは訳が違います。ほんと罪づくりです。同じ刀剣商として情なくなります(すみません、と強欲刀剣商に代わり当店がここで謝っても今さらの話ですが)。ホントは拵もあったはずですが、こちらは不幸にも現存しません。追剝ぎにあったと思って諦めましょう。話を戻します・・・つまり、本作はそれだけ貴重な作品であり、今後もずっと一組の大小として残さなければいけないものなのです。
(固い絆で結ばれた大小に代わり、永遠の誓いの言葉を交わす・店主宣誓)

生まれつきの大小というからには、色んな個所が似ていて当然です。造、鍛え、刃文、匂口・・・似ていますというより酷似しています。とはいえ、大の方の刀姿をそのまま縮小したのが小なのかと言ったら、そこは考えられていて、ほぼ同じ身幅に対して鎬地の幅が少しですが違っています。驚くことに脇指の方が鎬地が広いのです。脇指は短いので、鎬地を広くしてバランスをとっているようで、切先も刀より大きめです。これは刀をそのまま縮小した姿にすると、こじんまりとした、さも華奢な刀姿になってしまうのを避けたからで、刀の姿を脇指の長さの所でバッサリと詰めて、そこに切先を形づくった姿になっています。ある意味、自然な造であり工夫だと思います。刀が先か脇指が先かは判りませんが、一緒に造り出された経緯なり作刀のプロセスが伝わってくるようです。

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