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太刀・刀

陸奥守藤原歳長

商品番号 : B-093-246

江戸前期 山城・伊勢 特別保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:65.1 cm 反:2.3 cm 元幅:3.44 cm 先幅:2.44 cm 重ね:075 cm 目釘孔:2つ

体配
冠落造、庵棟、生中心、鑢目は化粧に筋違。鎺元より5寸程上まで、表は二筋樋、裏は腰樋を丸留に彫る。
地肌
小板目肌良く詰んで総体にやや肌立ち、整った肌合いになる。所々地景が出て、鎬地・棟寄りは柾目になる。
刃文
焼幅の広い大五の目丁子乱。小沸出来の匂口はふっくらとして深く、刃中に小沸が厚くつく。総体に金筋、砂流が明瞭に所作する。
鋩子
直調に入って少し乱れ、先が掃掛け気味に小丸となって浅く返る。
陸奥守藤原歳長

大坂焼出に始まる大五の目丁子乱が乱高下します。振れ幅が激しい魅力的な稜線は、目で追う側に迫力と豪壮さを印象付ける、そんな一振です。特に物打のやや下あたりに至っては、鎬筋を越すほどの焼きの広さ、強烈なインパクトを発しています。表裏の刃文形状は新刀らしく、ほぼ揃っていています。この刃文、何かの写ものかと想像するのですが、なかなか思い浮かびません。古刀に疎い当店が思い浮かぶのは、肥前の播磨大掾忠国ぐらい。同じ新刀ですし、離れた肥前の忠国を写したとは思えませんが、展開する刃文のイメージと深い匂口の様はかなり似ていると思います。まさに夏の積乱雲如きですが、本刀には丁子の足が頻りに所作する点と、金筋・砂流が絡む点がちょっと異なる印象です。そして小沸出来の匂口は深々と広がり、灯にかざさなくともクッキリと浮かび上がります(もちろん、研の効果もあるとは思いますが)。
本当の姿もまた惹きつける造をしているようで、途中から鎬の肉を薄くした冠落で切先も延び心。反深く元先の差もあまり感じられず元禄頃の姿に近いと思います。強いて言えば室町後期の末古刀のような姿ということでご納得いただければ幸いです。その姿に腰樋と二筋樋・・・この樋、妙にハマっています。ただ、薙刀樋ではなく腰樋と二筋樋の丸留にしたのは何故でしょうか。ともかく、総体に斬新ながらも良く纏められた姿に激しい刃文の組み合わせといった、普遍的なイメージをあえて避けた作り込みは成功したようで、独創的な印象を受ける一振といえるかもしれません。

初代の陸奥守藤原歳長は三人兄弟の真ん中。共に京都に出て堀川系の刀工に学んだと伝えられますが、堀川の鍛治とは一体誰なのでしょう。国広の堀川一派の誰かなのでしょうか・・・話がずれましたが、本刀の作者はおそらく二代歳長かと思われます。いろいろ調べても、初代と二代を区別して評している事例がなく、一様に初代歳長として紹介しているようです。ただ、本刀に関しては、その刀姿が元禄頃の姿をしているというだけの理由で、当店としては二代ではないかと推測したまでです。この点にしても、特徴的な冠落であり注文打の可能性が大きいことも確かで、もしそうであれば初代ということも・・・おまけに新刀特伝の見せる刀としても、初代は寛文・延宝頃、二代は貞享頃、決定打にはなりません。しかしどちらにせよ、初二代の区別とは関係なく本作の出来は褒めて然るものだと思います。なんだかんだと言っても、目の前にある現物の出来を名前やランクで評してはいけないということなのでしょう。

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