長さ：22.0 cm　　幅：1.31 cm　　高さ：0.51 cm
金の袋着がよく残っています。露象嵌も剥がれているのは1個所だけ。桃山期の作としてはかなり状態の良い笄です。粟穂部分の金板の剥がれ方がこれまたよく、何とも古雅の良さを教えてくれます。彫も上手です。粟穂は茎を長く描くと弱々しく感じられますが、この作は額内のレイアウトを良く計算し葉を描いているところが見事で、こんもりと盛上がった肉置も効いて、力強いというより豊かさを感じます。彫も葉の感じや穂の様子を良く表現しています。時代を上げて乗真と言われても頷く作で、宗乗と言われても不思議ではありません。何より驚くのは魚子の処理・・・彫際における魚子の蒔き方が非常に巧みで、潰れも強弱もなく整然と蒔きながら周囲の配列に不自然なく展開しているのです。姿は肩から胴にかけて僅かに膨らみ、棹に流れる線、そして肉のついた厚みといい、この時代の特徴が良く表れ、見れば見るほど見入ってしまう魅力ある笄です。