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笄

菱に蟹図(無銘・古金工)

商品番号 : KG-027

桃山期 保存刀装具 桐箱入

売約済

赤銅魚子地 高彫

長さ:23.1 cm  幅:1.42 cm  高さ:0.58 cm
俗にいう時代笄の造をした本作ですが、赤銅地のせいか上手の作に見紛う姿をしています。すこし赤みがかった赤銅地ですが、山銅地の作とは随分趣が変るものです。肉置も豊かで、そこから彫込まれた紋様は時代を感じる擦れでなだらかな陰影を見せています。蕨手はともかく、眉形の刻みは時代笄の所作でありながら、ふっくらと弧を描く胴の厚みの取り方も含め総体としては上手の姿に、どう評価すべきか迷う作です。ちなみに、ウットリ象嵌を念頭に置いたのか何カ所か彫際に切込みが確認できます。それも踏まえれば、上手の類いで注文作と捉えてもよいと思われます。
画題は菱に蟹。菱は意外にある画題なのですが、そこへ蟹が左端に一匹だけ配されています。作者の遊び心なのか、意図した構図なのか、これも考えさせられます。水辺の植物である菱は、食物でもあり繁栄を表すと思うのですが、蟹はどうでしょう。単独の画題としての蟹はありますが、やはり水辺という関連から蟹を配置したのでしょうか。菱蟹という蟹はいますが、それはガザミやワタリガニのことで、ここに描かれている「沢ガニ」風の蟹とはフォルムが全く異なります。作者がそれも踏まえながらも、混同を承知の上で彫ったかも・・・あるわけないですね。ともあれ一匹の蟹が気の効いた趣を演出している本作です。

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