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笄

老松図(無銘)

商品番号 : KG-037

桃山期 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫 金色絵 蕨手金

長さ:22.7 cm  幅:1.40 cm  高さ:0.62 cm
肉置豊かにふっくらとした体配、長さも幅も江戸前期以降のものより一回り大きい本笄。見るからに桃山期以前の作とわかる笄です。ただ、首から肩にかけてのラインは少し張って厳つく点を考慮すれば、室町後期までは時代を上げれないと思います。総体には古笄の上手作の体配そのもので、耳の立ち上がりや七子粒、小縁の所作を見ても、数物とは言えない造です。極上の上手作と異なるところは、本笄の地金は山銅であり彫の出来だけかもしれません。よくある時代笄とは一緒にするには抵抗がある作です。これが真黒な赤銅地だったならばそれなりの高級品と評されても不思議ではありません。
その彫ですが、決して巧い方ではなく、ラフな鑚痕がいたるところに確認できどちらかと言えば粗い所作。良く言えば味わいのある所作。小縁の立上り部分にまで七子を蒔いた跡が残り、紋の際にも七子を調整して蒔いた痕跡があって、無垢の地彫(肉彫)の証拠を確認できて好感が持てます。画題である老松のフォルムにしても抜きん出たデザインではなく、画角に置きましたというレイアウトです。下手とは違います。個性というかオリジナリティが感じられないという感想です(これはあくまで当店の感じ方です)。
それより気になるのは色絵です。輝きがなんとなくマッタリとしてマットな感じを受け、紋全体が同じトーンで金が残っています。着色技法も袋着や普通に見られる鑞付色絵ではなく、どうやら鍍金のようです。だから色合が鈍いのではなく、色揚を仕直している可能性があるのです。紋自体はそれなりに擦れた状態ですが、なぜか色絵には擦れた所が少ないのです。この状態なら色絵がもっと掠れていてもよいのですが・・・。考えられるとすれば、出来立ての時は色絵は施されてなく、後世に色絵も含めて色揚げ仕直したとすれば現状に納得がいきます。当然、金蕨手もその際の所作でしょう。鍍金の状態からみれば、色揚をやり直した時期は江戸後期かもしれません。まあ、古の美人が化粧直しをした姿とみればよいのです。いえ、正しくは、それまで素顔で過ごしてきた美人が初めて化粧をしてみた・・・美魔女に変身できたかは皆さんの受け止め方次第です。

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