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笄

大根に鼠図(無銘)

商品番号 : KG-047

江戸初期 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫(鑞付据紋)

長さ:22.3 cm  幅:1.41 cm  高さ:0.55 cm

素朴な時代笄とは少し趣が異なり、体配が豊かで彫そこそこ、だからといって上手作の豪華な古笄ではありません。作位は中作としても結構な見所が詰まった作です。造からみれば厚みのある贅沢な肉置、ずっしりと重量感が伝わります。彫口が大胆で、鑚跡が至る所にみられ金工の手作業が直に感じられ微笑ましいのですが、七子の処理も荒く決して丁寧とは言えません(そこが味わい深いのですが)。問題はこの紋は地板からの肉彫なのか据紋なのかという点で、縁の立上りは鑚跡や紋の形状に沿った七子の処理も見られ肉彫としたいところなのですが、一、二箇所に七子粒に重なったような所があり判別困難な所作・・・まいったな・・・鑞付据紋なら時代は江戸期、逆に肉彫なら室町後期も考えられる所作・・・暫定ながら当店は、耳や肩、地金の質、そして画題のデザイン等を総評して、江戸初期としました(皆さん、解釈を突っ込んでください。その方が当店も気が楽になります。)。
時代は別として作域は面白く、なんともユーモアに溢れた構図。半欠けの大根に鼠が屯ろしています。大根は何故下半分だけなのか謎です。普通は葉っぱも含め大根ですよと描きますが・・・鼠が食べてしまった? いえいえ、バッサリと切断した切口を彫で強調していますから、金工のコンセプトあっての表現です。(本当は大根ではなく別のものだったりして・・・)想像ですが、鼠は細長い尻尾をえがくことで鼠だと認識できます。その尻尾の意味合いを汲んで大根も尻尾だけにしたのかもしれませんね。その大根に噛り付いている鼠がまた滑稽で、髭のデフォルメがユニークで愛らしさがあります。右端の鼠は大根の中に首を突っ込み、トンネルを掘っている状態・・・面白おかしく豊穣を願った本笄、作者のセンスが光ります。

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