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笄

丸に井桁紋五双図(無銘・古金工)

商品番号 : KG-056

桃山期 保存刀装具 桐箱入

80,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金袋着色絵 蕨手金

長さ:21.8 cm  幅:1.34 cm  高さ:0.41 cm  紋部高さ(最大):0.52 cm

定寸より少し長めであっても、ちょっと寸詰に見える体配。胴部の幅からすれば本来はあと1センチくらい穂先があったのかもしれません。それにしては雉子股(胴から窄まる所)のあたりが痩せて見えます・・・もしかすると肉置を削って姿を調整したのかもしれません。その部分のある少し凹んだ痕は、その名残り? もしそうなら、あまり上手な加工とは言えませんね。総体の肉置はかなり豊かでフックラとして桃山期の笄によく見られる姿です。赤銅の地金も真黒で、上手作の古笄を匂わせますが、紋に目を移すとその期待はある意味、裏切られることに。
画題は家紋を五つ並べた、丸に井桁紋五双図。少し窮屈なくらいボッコリとした紋が並びます。一つ一つの家紋は手彫り感を残しつつもヘマをした彫ではありません。ただ、地板の七子の状態は褒められたものではありません。よく見ると地板はかなり粗く、歪んだ面、そして小縁の内側には削痕も各所にもあり、いくら肉彫とはいえ下手くそです。そこに長年の埃垢がついて醜態をさらけ出している状態です。七子粒自体も真当に蒔いているのか疑問です。丸い家紋の中にも七子が蒔かれているようですが、こちらも同じ状態。ただ、この家紋は据紋の可能性があります。側面と地との際にはハミ出した鑞の痕跡らしきものが確認できます。もしそうなら、井桁自体も鑞付されているかもしれません。鑞付で加工した丸い家紋を、さらに地板に鑞付した、ということでしょうか。受けるイメージは異なるかもしれませんが、実際、鑞付けだろうが肉彫だろうが現状には影響はありません。
彫はこんな状態の作域ですが、色絵は金の袋着、蕨手も金象嵌(これは後補の可能性があります)、上手作に見られる所作です。これを踏まえての評価は果たして・・・材料は良し、画題もよし、でも彫が・・・本笄の鑑定書では古金工となっています。その通りだと思います。時代は金袋着、そして家紋という画題からして桃山期が妥当なところ。ただし、下手くそな古金工の作! ボロクソに書きましたが、当店としては嫌いではありません。こうなってしまった金工の冷や汗を受け止めるのも愛着の理由になると思います。それに古い作であることは確かですから。

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