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笄

水草に鮎図(無銘)

商品番号 : KG-061

桃山期 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫 金色絵

長さ:23.0 cm  幅:1.33 cm  高さ:0.43 cm  紋部高さ(最大):0.56 cm

状態の良い時代笄をご紹介します。良いとは言ってもそれなりに古い作ですから、多少の擦れや疵、色褪せなどは当然あります。それでも健全度はかなり良い方で、金色絵があまり残っていないことを無視すれば、使用に耐えながらも欠損などもなく生時の状態を今に伝えています。なので蕨手は彫られていません。安易な推測ですが、数物の代表みたいに言われるこの手の作は、本来、蕨手がないのが生姿なのかもしれません。蕨手のある作をみると、意外に荒っぽく形状も歪だったり、彫るスペースが狭かったりと後彫に思える所作が多くみられます(・・・あくまで主観です)。
本体の体配はふっくらと丸味を帯びて、紋も画題のせいもあってゴツゴツしていません(もちろん手擦による磨耗も関係していると思います)。側面からの姿は少し腰が低い感じがしますが、身幅は広く正面から見れば存在感は十分。彫は取り立てて褒めるところはありません。しかし構図はまとまっていて、鮎と水草(藻)の絡み具合に動きが出ていて上手だと思います。抜けたところがないというか、安定感がある構図をしています。まあ、額内を大きく使って画題を埋める描き方は時代を表しているような、上品さよりも豪華さを選択したレイアウトに思えます。そいう意味では後藤家の作域ではなく古金工なのでしょうね。
金色絵はすべての鮎に施してあったようで、生姿時は映えた印象だったろうと思えます。因みに水草には6ヶ所ほど露象嵌があり、現在は擦れてよく見えませんが銀色絵が施されていたようです。数物にしては贅沢な所作・・・七子粒もそれほど雑というわけでもなく、数物の中での上作という印象です。もちろん、高級な赤銅の上手作とは比較になりませんが。
ところでこの水草ですが、刀装具における典型的な藻の描き方です。本笄は鮎に水草ですから舞台は川、この水草は梅花藻(バイカモ)です。しかし藻貝図などにあるように、海を背景にした藻(海藻)でも同じ形状をしているとは思いませんか? これは不思議です。海藻ならもっと異なるデフォルメがあっても良さそうなもの・・・ん〜、どなたかご教示を!・・・やっぱりこの形状が藻だとわかりやすいのでしょうか? 海と川の違いといったら海水か真水か・・・気にするほどでもない塩加減の問題かもしれませんが・・・。

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