長さ：9.68 cm　　幅：1.41 cm　　高さ：0.72 cm
上質な赤銅魚子地に高彫した二疋牛（おそらく夫婦牛）を配した小柄。豊かな肉置から高々と彫られた画題が構図中央にレイアウトされた造りは、後藤の造を思わせます。出しゃばらず、丸みを帯びた二疋の牛の重なり具合は絶妙で、間延びして見えない一体感のある彫は見事です。細かな魚子地は、銀象嵌が剥がれてしまっていますが、すべての色絵が剥がれてしまっても黒々とした赤銅がそれを補って余りある風合いです。
残念なことに小口から中央部にかけて本体の合せ目が剥がれています。注目は両牛の胴体にある丸いリベット跡。つまり据紋です。それも上部からリベットで留めた珍しい所作です。大概は鑞付による据紋ですが、この方式はいつ頃行われた技法なのか何も解っていません。鑞付をもっと強固にするための補強なのでしょうか。それとも紋が脱れてしまった故の補修かもしれません。気になるのはやはり、この所作の時代ですが、現在は画題や素材、色絵など、別の視点から推定するしかありません。当店では江戸初期から前期頃ではないかと推定しています。