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小柄

小柄

貝尽図(無銘)

商品番号 :KZ-072

江戸中期 桐箱入

50,000円

赤銅七子地 高彫 金銀色絵 銀露象嵌

長さ:9.66 cm  幅:1.42 cm  高さ:0.46 cm  紋部高さ(最大):0.60 cm

本小柄の画題はちょっと変わっています。よく見られる貝尽の図といえばそれまでですが、それに流水と烏が参加して一枚の光景を構成しているのがわかります。この組み合わせはあまり類例がないと思われ、当店としては初見の構図です。貝、烏、流水、どれもが古くから使われてきた画題ですが、普通は別のアイテムと組み合わせた構図が定番です。しかし本小柄では、法螺貝に鮑といった海に棲む貝に流水(川)の組み合わせ、それに濡烏ならぬ水飲み烏(遊んでいるようには見えないので)・・・左側の貝を汽水域に棲む浅蜊や蜆だとしても合っていそうで不自然な光景に思えます。まあ堅く考えずに、瑞鳥(烏)のご加護に豊かさ(貝)を組み合わせた縁起物としてみれば良いのかもしれません。
造は二枚貼構造の地板嵌込。金色絵は袋着に見えますが、厚手の金焼付か銀鑞による色絵です。製作時代も古そうに思えますが江戸中期頃、上げても江戸前期の終わり頃かと。銀が施された流水がポイントで、この形状は程乗あたりの後藤家の作によく見られる所作、桃山期以前の作には皆無です(この見方は当店だけがそう思い込んでいるだけかもしれません。注意です。)。それに加え、左側の浅蜊か蛤のデザインも古い作には見たことがありません。流派は、烏や流水、細かく整った七子地から見れば後藤家と見ることができます。ただ、左右一杯に広がった全体の構図、真黒とまではいえない赤銅の色合いから、本家ではなく脇後藤と思われます。京金工に極められることはない(希望的推測)とは思いますが、審査に出して仮に後藤本家以上、または伝が付くにせよ個銘に極められたら、それはそれで喜ばしいことだと思います。

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