古の刀装具 HOME
TOSOGU OPINION SITE
小柄

小柄

笹紋笹図 奈良正次作(紋・古後藤)

商品番号 :KZ-084

江戸中期(紋・江戸初期) 保存刀装具 桐箱入

130,000円

素銅磨地 赤銅据紋象嵌

長さ:9.55 cm  幅:1.51 cm  高さ:0.53 cm  紋部高さ(最大):0.76 cm

これはまた面白い珍品の小柄をご紹介します。何か珍しいか・・・紋だけを切り取った一般的な笄直ではなく、笄の紋の木瓜部から上を切り取って、その外形のまま小柄に嵌め込んだ笄直もかなり珍しい作例ですが、本小柄はそれに加え、直した作者銘が刻られていること、さらに素材となった笄と加工した作者が別系統だということです。
笄直の作者は奈良正次。金工事典によれば、正次はどうやら奈良正長の門人・正敷と同人らしく、江戸中期の金工です。その奈良派の正次がよりによって古後藤の笄を小柄に仕立て直すことになりとは・・・当の本人は困惑したのかそれとも歓迎して挑んだのかは想像できませんが、本作を見る限り持っている技量を発揮したことは確かでしょう。
加工した造は至ってシンプルで、切り取った笄をそのまま素銅の本体に組み込んだだけですが、どうやらこの本体は片手巻にように見えます。棟方側には貼り合わせた鑞付の跡と小口に数ミリの小さな割れが確認できますが、刃方側を精査しても鑞付の跡を見つけられません。時代は江戸中期、二枚貼合構造ではなく一枚を折り曲げた片手巻構造・・・う〜ん、まあ、確かに小縁のない棒小柄なので有りなのかも。裏面にはまばらに縦の鑢(時雨鑢でも猫掻鑢でもない)が施され、銘が刻られています。(銘の真偽について当店は不問の立場です。銘に関係なく紋を評価しての紹介と捉えてください。)
そして肝心の紋ですが、画題は笹、根笹でしょうね。その二枚ある笹の葉の内、左の裏返っている葉には七子が巻かれています。それも両面にです。片や右の葉はツルツル。裏返ったどちらかの面に施すならわかりますが、これはちょっとした謎かもしれません(考え過ぎかなぁ)。笄自体の彫は丁寧で七子も細かく整然として上手です。ただ、笹の紋は鑞付据紋だと推測されます。そして問題は笄本体の造込にあります。この笄、幅が約11.5ミリ程で、ずいぶんと細身です。ここから想定される長さは、あっても定寸の21センチ、実際はそれよりも短いと思われます。本作の鑑定書の極は「紋古後藤」となっていますが、桃山期以前の古後藤ならば一周り、いえ、二周り大きな本体が普通だと思うのですが(たまたま細身だったと思えば良いのですが)・・・当店はこの笄はもう少し時代が下がった江戸初期頃(本当は江戸前期としたいところ)ではないかと考えています。
本作は珍しい分、考察する視点が多くあり、その整合性もまた複雑なようです。こっちを立てればそっちが立たず・・・でも、その理由を探し当て正体に迫る面白さが詰まっています。そして導き出される答えの可否とは関係なく、愛蔵すべき実体があることに感謝です。

ページトップ