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小柄

小柄

葡萄図(無銘・古美濃)

商品番号 :KZ-087

江戸中期 保存刀装具 桐箱入

80,000円

赤銅七子地 金紋 表裏哺金

長さ:9.72 cm  幅:1.40 cm  高さ:0.50 cm  紋部高さ(最大):0.80 cm

材料はかなり贅沢に、けど決して上手の作ではない上辺だけの作・・・こんな風に書くと本小柄に失礼だとは思いますが、真っ正直さが当店の真髄。感じたままを書いちゃいます。ただ、本作に罪はありません。金工にも非はありませんが、如何せん材料を活かし切れなかったようです。そして極は許容範囲の最上限を選択したようで、博学の先生の見識を遺憾なく発揮されたようです・・・正直、そうきたか!と意表を突くゴリ押しに、尊敬と憂いを覚える次第です。そいう手前も言える程の眼力と裏付けも乏しく、言ったところで「そういう見方もありますね」で瞬殺。てなわけで、本小柄の紹介も「そういう見方の一つ」として上の空で読んでいただけたら幸いです。
画題の葡萄は金紋。金無垢ですから贅沢です。本体も哺金で囲って、これまた豪華な造。剥げ落ちた個所はほぼなく保存状態も申し分ありません。この本体は桃山期以前に作られた作とは思えないほどの健全度で、江戸後期の作か、または後補で哺金を施した可能性が高いと思われます。とすれば、葡萄の金紋と地板は・・・七子地の地板は多少の擦れが見られるものの、微細で整然と蒔かれ後藤家顔負けの出来。その上に据えられた金紋は見事な抜孔が目につくデザイン。彫も抜群に上手いとはいえません丁寧に仕上げています。しかし残念なのは、紋の位置が天地の中央ではなく、少し下がった位置にあることでしょうか。左右はほぼ中央に位置していますが、天地のバランスが・・・これは一体? 据え損なった? その金紋を精査すると、両端に何やら不自然な凹みを発見。こ、これはもしやリベットを穿った跡? よく見かける所作ですが、この金紋は上からのリベット留めです。丁寧な上作であれば金紋自体に金の足をつけて地板に留めますが、この紋には足がなく上から据えるしかなかったのでしょう。おそらく隠れた足は金ではなく素銅か山銅でしょうね。
これらの事実から、この金紋と本体・地板は異なる時期に作られたものだと推測されます。幾ら何でも足に使われる金をケチって、見栄えを台無しにすることはしないと思いますが・・・もしそうだとしたら、この作はかなり新しい作ということになります。逃げ道は古い紋を後補の本体に据えたということで・・・おそらくこれが、古美濃という極の根拠になっているのでしょう。では、この紋は本当に古美濃なのでしょうか。わかりません・・・横長で抜孔だらけ、葡萄図、構図もさも美濃風です。しかし金紋です。古後藤とされる作でも金無垢の作はかなり希少で、それさえ時代に対する真偽の裏付はありません。本作を無難にみれば、古美濃ではなく江戸中期あたりの美濃とするのが当店の見方です。因みにこの金紋ですが、過去に目貫だった可能性が極めて高いと思われます(あくまで想像の範囲ですが)。もし目貫であれば、向きからして裏目貫。
この繕いだらけの本小柄、極はどうであれ、こうやって後世に残されてきたことに感謝です。幾度か変身を遂げてきたその経歴の重さと価値を無視して、見た目で判断をして欲しくはありません。それでも小道具の趣向はそれぞれです。本小柄の評価、みなさんにはどう映りますか。

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