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目貫
干鮑図(無銘・古金工)
商品番号 :MK-035
室町後期 保存刀装具 桐箱入
160,000円
山銅地 容彫
表/長さ:4.06 cm 幅:1.42 cm 高さ:0.59 cm
裏/長さ:4.19 cm 幅:1.36 cm 高さ:0.50 cm
干鮑とはあまり見かけない図柄です。現代では高級食材の鮑ですが、古の時代でもやっぱり高価な食べ物だったのでしょうか。武士が身につける道具に干鮑の画題はあまりそぐわない気がしますが、豊かさを表す意味では有りなのかもしれません。きっと海辺に住む武士が用いたもの、あるいは貴重な品と勝手に決めつければ済む話です。まさか、珍味の意味合いがあるとは思えませんが。
造はかなり極薄の山銅を圧出した、のっぺりした姿にみえます。おまけに井桁の隙間が空いていないので手を抜いた下作に思えますが、実は手の込んだ所作が施されており、注目すべき見所の一つです。この井桁の所作、薄板を裏から圧出した後に、表側から丁寧に凹ませている跡が残されているのです。少しずつズラしながら凹ませ孔が空くギリギリまで叩いているようです(透にしてしまうと強度の問題が出てくると思われます)。数カ所に貫通してしまった跡と薄すぎて割れが出た箇所があり、この時代の金工の手間と無駄をなくす造込み方にこだわりを感じます。井桁の表面にも微細な凹みを一面に穿っており、何とも芸の細かい所作が確認できます。本作、裏行の妙技を表にも施した巧の秀作です。