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目貫

目貫

錠前図(無銘・古金工)

商品番号 :MK-072

江戸最初期 保存刀装具 桐箱入

売約済

赤銅地 容彫

表/長さ:4.08 cm  幅:1.14 cm  高さ:0.41 cm
裏/長さ:3.62 cm  幅:1.39 cm  高さ:0.41 cm
錠前をモチーフにした無赤銅の目貫。お、造込だけで勝負にきたか(これは期待が持てそうな)・・・“失礼”と呟きながらひっくり返して裏行を見ます。ほぉ〜、薄いではないですか。地板の薄さは中々です。錠前の部分は長方形に圧出した跡がくっきりと確認できます。それにしても平坦できれいな跡だな〜・・・うむ、これは型からの圧出・・・蝋や炭・漆を固めた型ではなく、もっと固い型に地板を被せて表側から形を整えたもの(珍しいわけではなく、よくみかけます)。それでも幾何学的な錠前のラインとはいえ、この薄さは見事な圧出です。6カ所ずつ空いている抜孔の縁の板厚は、これ以上無理ですと言わんばかりの薄さも見逃せない見所です。その反面、表の彫は控えめな所作。錠前はいかにも鉄の道具らしい風合いを見せていますが、鍵に付けられた紐の彫込はあっさりしすぎて少し物足りなく感じます。まあ、それは金工の思惑もありますので、突っ込むのはやめましょう。問題はデザインでありフォルムです。デザインの良し悪しを言っているわけではありません。デザイン自体は中々どころかかなり上手であり、魅力的なフォルムをしています。じゃー何が問題かって・・・それは表裏目貫のサイズで、表目貫は横長で幅がなく、逆に裏目貫は短めで幅広、極端すぎるのです。・・・こういった組み合わせは珍しくはありません。ただ、時代が絡んでくるとややこしくなります。鑑定書の本目貫の極は古金工。裏行、彫口、画題からも古金工の極を支持します。しかし、桃山期、ましてや室町期にこうした斬新な組み合わせの対を見たことはありません。こうした組み合わせが出てくるのは江戸中期以降の「見せるための小道具」に用途が変化してからがほとんどです(古い作にないとは言い切れませんが・・・)。それじゃー江戸中期以降の新しい目貫では?と言いたくなりますが、圧出の技と地板の薄さがその極を拒みます。もちろん、薄造りの目貫は幕末にもありますが圧倒的に数物、または明治期の浜物かプレス加工です。珍品の古い優作か、それとも例外的な新しい上物か・・・唯一の逃げ道は、江戸最初期に極める手です。古い造込を踏襲しながらも新しいデザイン感覚を取り入れて出来たのが本目貫だとすれば、かろうじて整合性が取れるのではないかと。なので、当店の時代極は「江戸最初期」とこれまた例外的に表記させていただきました。(みなさん、納得してないでしょうね。でも突っつかないでください、曖昧なのは当店もよく自覚していますので。)

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