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目貫

目貫

百足図(無銘)

商品番号 :MK-076

江戸初期 桐箱入

80,000円

赤銅地 容彫

表/長さ:3.98 cm  幅:1.58 cm  高さ:0.65 cm
裏/長さ:4.20 cm  幅:1.52 cm  高さ:0.63 cm

無赤銅の百足の目貫です。漆黒の色合いとはいきませんが、全身黒づくめで彫られた肌合いに妙にリアリティを感じます。虫嫌いな方にはゾッとする姿ですが、昆虫好きや変わりダネを好まれる方には興味の湧く作です(当店としてはとても好きなフォルムです)。うねうねと体をよじった姿を目貫の形状にしたうまくデザインしており、龍を目貫にした形状に似たデフォルメでしょうか。そういうことではデザインしやすい画題かもしれません。丸味のある体の節々がいいですね。実際に蠢く姿を想像してしまいます。その彫も滑らかで、特に顔から触手にかけての所作が上手に思えます。周りにぐるっと配された足をもっと彫り込んで、抜孔を作ってくれたら申し分ないのでしょうが、そこまで要望するのは酷というもの。実際、足の数と細さを考えたら無理強いです。作れたとしても、足の何本かは欠損する可能性が大きいでしょう。なので、これでよいのです。
表は良いとして裏行を見れば・・・あら、麦漆が。鮫皮のツブツブ跡も残っています。剥がすのを試みた跡から察するに、地板は厚くはありませんが際立って薄くもありません。足(根)は麦漆が詰まっているため残念ながら確認できません。しかし、腰がこんもりとしていて(底がほんの僅か削られた感があります)桃山期の姿としたいところですが、決め手に乏しく当店としては江戸初期頃の古金工作とみています。後藤家に極められた百足の作もあるようですが、作位的に後藤家はどうかと思われます。ただ、審査に出すと期待以上の極がつくかもしれませんね。その百足の画題ですが、後藤家上三代にもあるように結構古い画題のようです。ちなみに武田信玄の使番衆の旗印は百足です。時代は室町後期、当時から紋様として採用されていたわけです。現代とは美的感覚が随分と違うようですが、当時は願望や意味合い重視・・・そりゃそうですよね、戦国時代のハングリー精神はハンパありません。なにせ生死が身近に存在する日常だったはずですから。

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