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目貫

大小目貫

曽我物語図(無銘・水戸)

商品番号 :MK-217

江戸後期 保存刀装具 桐箱入

120,000円

銀地 容彫 金色絵 素銅置金色絵

大・表/長さ:4.85 cm  幅:2.12 cm  高さ:0.72 cm  重さ:8 g
大・裏/長さ:5.33 cm  幅:1.92 cm  高さ:0.64 cm  重さ:7 g
小・表/長さ:3.55 cm  幅:2.00 cm  高さ:0.73 cm  重さ:6 g
小・裏/長さ:4.22 cm  幅:1.51 cm  高さ:0.63 cm  重さ:7 g

曽我物語を画題とした大小揃いの目貫。見ての通り、四つの形状や重さはバラバラです。そりゃそうです、なにせ物語のワンシーンを切り取って形にしているわけですから、表情や仕草・動作の取り方によって話の内容や躍動感の印象が左右されます。本作はそういう意味で攻めているのは十分に伝わってくる構図といって良いでしょう。まさに歌舞伎の演目を連想させるフォルム、現代の方にとってはエンターテイメントの目線で見てしまうかもしれません。題目となった曽我物語は、基本的に仇討の話。武勇や尊厳・忠誠といった武士の生き方の琴線に訴求する内容ですから、当時の武士にとっては普遍的なテーマとして支持されたのかもしれませんね。(曽我物語の詳細はそれぞれでお調べください。)
本作の造ですが、地金は赤銅や山銅ではなく銀です。その銀地を容彫にしているのですが、表は極めて立体的に彫り上げています。かなり大振りで高さもあり、それだけでも躍動感が滲み出ています。特徴的というか面白いのは色絵の所作で、銀地に金と素銅の色絵と思いきや、よく見ると鑑定書にもあるとおり素銅は置金の所作。無垢の素銅を塊で象嵌しているのです。色絵でも良さそうなものですが、置金にするあたりは金工の拘りなのか、流派の作域なのか・・・この手の作は江戸後期・幕末頃の水戸金工によくみられる所作です。鑑定書も極は水戸金工にいくしかありません。同感です。
裏行には麦漆が残っていて圧出はよく確認できませんが、地板の厚みや時代を考慮すれば、あえて評する必要もないでしょう。でも一つだけ感心する所作が・・・大小ともに足を陰陽根にしている点で、しかも結構丁寧にほどしています。まあ、それはそれとして、この時代になれば圧出がどうのこうのというのは不毛です。表の彫の所作と作域で勝負なのです。本作で楽しむべきは顔の表情や姿の彫、そして動きのある構図・・・そこから物語を妄想すれば良いのかと思います。

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