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揃金具

二所物

瓢箪鯰図(無銘・伝栄乗)

商品番号 :SK-009

江戸初期 保存刀装具 桐箱入

240,000円

小柄/赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀色絵  目貫/赤銅地 容彫 金色絵

小柄/長さ:9.64 cm 幅:1.40 cm 高さ:0.63 cm
目貫/[表]長さ:3.85 cm 幅:1.56 cm 高さ:0.57 cm [裏]長さ:3.90 cm 幅:1.57 cm 高さ:0.58 cm

瓢箪鯰。掴まえどころのない様をあらわしたこの画題は、敵に捕まらない、逃げ果せるという武士の験担ぎにはもってこいの意味から、小道具の中では結構メジャーな題材です。本作はその小柄と目貫の二所物。小柄はおそらく笄直。画題の向きが左を向いておりこれは笄の図取りでしょう。右の人物が手にした瓢箪(紋の右端)の脇に、加工した際の痕跡(七子地が異なる)も確認できます。紋全体が少し右寄りに感じるのは笄直の影響かと思われます。目貫は彫が結構巧みで顔の表情もしっかりしています。地板は少し薄め、圧出は強く括りもあり裏行からも技量の高さが汲み取れます。小柄・目貫共に時代はおそらく江戸最初期、小柄の方が目貫より少し古いと思われます。
ここまでの紹介でも分かる通り、本作は取り合わせの二所物。随所に相違が表れています。僅かに異なる赤銅の色、色絵、人物の表現、鯰のフォルム・・・どれをとっても画題以外共通する所作が見えません。生の二所物であれば、彫口や色絵などの所作に共通する要点があるものです。極めつけは小柄が笄直だということで、総体に考えても取り合わせの作としか考えられません。
ただこのことが本作の出来の評価に影響するものではなく、どちらも江戸初期の上手作であり健全度も時代相応の状態です。気になるのは“二所物で伝栄乗”という極が付いていることで、小柄も目貫も伝栄乗ということになります。もちろん「伝」ですから、「栄乗とされる」と解釈すればそれで良しです。ですが時代の異なる二つの作を前にして、たぶん同じ作者ですねと言われても・・・これが個銘の栄乗ではなく古後藤だったら、悩ましい問題は起きないのですが。まあ、どのみち江戸最初期より古い作で生の揃金具を望むことの方が、無い物ねだりということでしょうか。

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