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鐔

縄目紋図(無銘・信玄)

商品番号 :TB-029

江戸後期 桐箱入

売約済

竪丸形 鉄槌目地 鉄真鍮針金象嵌 丸耳 片櫃孔

縦:7.20 cm 横:6.58 cm 切羽台厚さ:0.39 cm 耳際厚さ(象嵌含):約0.68 cm
俗に信玄鐔、百足鐔と呼ばれている鉄と真鍮の針金を象嵌している本鐔。縄目を外周の内側に象嵌し、縛り付けたような結目を鉄で鑞付しています。いたってありふれた信玄鐔の類いですが、耳を真鍮の針金でぐるっと編み込んだようにしている点がちょっと変っている点でしょうか。耳をよく見ると、鉄の針金を真鍮の針金で挟んだ3本の針金を押さえるようなデザインになっており、耳まで施した理由が見てとれます。耳際が厚く切羽台が中低になっていて、形状的にはさも古そうな感じを受けますが、どうやら平地に阿弥陀鑢のような筋があり、それも古い印象を与えているのでしょう。しかしこの阿弥陀風の筋は、凹んでいるのではなく浮き上がった筋なのです。よ〜く見てみると、漆のようなものが割れて浮き上がった筋のようです。ただ、阿弥陀風にしたのは意図的なデザインでしょう。平地もそうですが針金が象嵌された隙間にも、この漆のようなものが全体に塗られています。よく漆を塗った鐔を見かけることがありますが、それと同じ類いの所作かもしれません。装飾の手間はそれなりにかかっていますが、華麗さや繊細さ、情景といった美ではなく、埃っぽく泥臭さを追求したデザインと所作で、少し視点を変えて評価すべきものだと思います。
上記の理由で古く見える本鐔ですが、江戸中期以前まで上るほど古いかは疑わしいところです。信玄鐔の始まりも定かではなく、幕末から明治期のハマモノ(輸出・土産用)ではないかとの説もあるぐらいです。如何せん、奇異な鐔として愛好されるものですから、時代はあまり気にしない方がよいかもしれませんね。

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