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鐔

稲穂図(無銘)

商品番号 :TB-062

江戸後期 桐箱入

50,000円

丸形 鉄石目地 鋤出彫 金布目象嵌 赤銅覆輪 両櫃孔

縦:6.86 cm  横:6.61 cm  切羽台厚さ:約0.50 cm  耳際厚さ:約0.52 cm

たわわに実った稲穂そのものではなく、豊かに実った稲穂の一光景を捉えた本鐔のデザイン。稲穂を写実的に見せたいわけではなく、豊穣さを表したかったのがわかる一枚です。要は目の前の稲穂を拡大して詳細に描くか、それとも後ろに引いて田園に広がる稲穂を風景として描くかの違いですが、それによってテーマは同じでもコンセプトは違ってくる良い例かもしれません。
丸い画角いっぱいに密集した稲穂が彫られている表面は、乱雑な茂みにしか見えなくもなく、少しイラっとします・・・穂だけではなく葉や茎にも所々色絵を施したのはやりすぎの感が・・・加えてその色絵もザラついた感じになってしまう布目象嵌ですから仕方ないのかもしれません。それが頭に残っているせいか、裏面はすっきりとした見え方に。枝葉の構図がややシンプルになってはいますが、こちらは稲穂だけに色絵が施されており、明快です。そして、冒頭に書いたように、やや稲穂に近づいた距離感のサイズです。表の稲穂に対して裏の稲穂の大きさが少しサイズアップしていることに気付かれたでしょうか。この遠近感覚を取り入れたのは、意図的でしょうか? それとも無意識にそうなってしまったのか、本鐔の作者を問い詰めたいところですが、今となっては推測のタネを蒔いてくれたことに感謝しましょう。当然、表裏に差をつけることは鐔のデザインをする上で常識かもしれませんので、その点も踏まえて妄想してください。
造はほぼ均一な厚みの地板に鋤出彫で茂みを彫り出し、茎・葉・実にわずかに毛彫を加えただけのシンプルな所作。平坦な美濃風鐔と言えるような彫口ですが、風合いは武州風鐔のイメージ。彫った平地は石目地風のやや大きめの凹凸処理で埋め尽くされており、一概に数物とは言えない丁寧さもみられます。切羽台周囲の側面には鑚痕の跡も残り、手作業の素朴といった味わいもありますが、ただ残念なことに、無銘です。ちなみに赤銅の覆輪は後補か生なのかはわかりません。ただ、この真黒な覆輪の所作、色も含めなかなかの出来です。

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