古の刀装具 HOME
TOSOGU OPINION SITE
鐔

秋草図 若水軒政則(花押)

商品番号 :TB-064

江戸後期 保存刀装具 桐箱入

200,000円

竪丸形 赤銅七子地 鋤出高彫(鑞付据紋) 金色絵 鋤残耳 片櫃孔(小柄)

縦:7.42 cm  横:6.83 cm  切羽台厚さ:約0.45 cm  耳際厚さ:約0.47 cm  紋部厚さ(最大):約0.66 cm

見せる、いえ、見せつける鐔、それとも鑑賞するための鐔。まず気づくのはその彫口。眼に映る空間を切り取ったかのような立体的な造形は、もはや三次元、彫刻作品です。画角一杯にあふれんばかりの秋草を、高低差のある鋤出彫で観せています。この立体感のある彫口を強調するためでしょうか、表面の小柄櫃孔の横に彫られた二枚の葉は、手前の葉が折り返された構図で、作者の意図ならぬ遊び心を盛り込んでいます。花は全て金の色絵を施し、それ以外は真っ黒にしてコントラストが効いて華やかです。裏面はいたって平らですが、表面は激しい凹凸。左上の一番高く盛り上げた領域に視覚の重点を置いています。(これは一般的に、相手から見たとき最も目立つ個所で、大概の鐔のデザインはそれを意識して作られています。)
贈答用とも思える本鐔・・・実際、拵に装着されたのか疑問です。中心櫃孔を見てもその痕跡は見当たらず、当然、責金の跡もありません。おそらく一度も使われたことのない生鐔です(断定はできませんが)。画題は秋草図、おそらく美濃鐔の写でしょう。銘が入っているので美濃系ではないと判別できますが、無銘だったら美濃に極められる可能性は高いでしょうね。なにせ鋤出彫でこの画題です。その鋤出彫ですが、本当に肉彫でしょうか・・・平地には所々、半欠けの七子があります。細かく狭い平地に七子を蒔くのは可能なのでしょうか。可能だとしたら驚愕の腕前・・・断定はしませんが、当店の見解は鑞付据紋だと推測しています。そうだとしても、健全度は抜群で見事な彫口の上出来な高級品ですが、最上級品といまでは言い切れません。その理由は地金の赤銅で、真黒な赤銅ではなくやや赤みを帯びています。切羽台をみるとその色合いがよく表れています。
作者は若水軒政則。一邑氏で安田方常の門人です。素銅の鐔や小柄がある巧手と金工事典に載っていることから、銅の刀装具が得意だったのかもしれません。時代も江戸後期、美濃の写も当然あるわけで、無名の美濃(古美濃も)や古金工と極められた作もかなりの数が江戸後期・幕末の作かもしれませんね。

ページトップ