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鐔

蝶図(無銘)

商品番号 :TB-069

江戸後期 桐箱入

50,000円

丸形 鉄磨地 地透 角耳小肉 両櫃孔

縦:6.83 cm  横:6.66 cm  切羽台厚さ:約0.55 cm  耳際厚さ:約0.51 cm  重さ:62.11 g

蜻蛉が向かい合っている図に見えます。羽が小さいので蜂のようにも見えます。そう見えるのは視野が狭いせいです。どうしても文様が混み合った部分に目が行くのです。そうなると蜻蛉や蜂にしか思えなくなります。それを物語るかのように、本鐔が入った桐箱には(現代の箱書ですが)「赤坂 勝虫透鐔 江戸中期」の箱書が。以前の持ち主も勘違いしていたようです。敢えて見紛うようにデザインしたのなら作者の勝ちですが、おそらくそうではないでしょう。デザインミスといえば言い過ぎかもしれませんが、デザインした画題が使用する側には違った画題として見えてしまうのは不本意なはずです。もうお判りですよね、表題にもある通りこの画題は蝶です。二匹の蝶が羽を広げて向かい合っている構図です。鐔をちょうど半分ずつ分け合っていて、外側の大きな羽の部分を認識できれば、今度は蝶にしか見えなくなります。あ、蛾にも見えますか・・・
造は鉄地に地透だけというシンプルな所作、毛彫も色絵も施されていません。なので、見所としてはちょっとした騙し絵的なデザインを楽しむ一枚です。「この図柄、なんだと思う?」などと、他の人の観察力を面白がるのは・・・いけませんね、そういう遊びは。作者の表現力を掘り下げて妄想するのは良いことです・・・実際、この二匹の蝶、まるっきり同じデザインではありません。構図はほぼ同じですが、羽の模様が異なります。表側を見て下の蝶は、最下部のラインがギザギザですが、上の蝶は滑らか。外側の羽の内側も下の蝶は弧の連続に対して、上の蝶は蕨手のような突起があります。こうして仔細に見るといろんな個所が微妙に違っているのがわかります。どうです、作者がいい加減にデザインしたのではないということがわかると思いませんか。惜しいのは、もう少し羽の模様に工夫が欲しかったことでしょうね。それぞれのラインに強弱をつけるとか。蝶らしい丸い斑紋をつけるとか・・・
まあ、デザインに関しては好みの問題ですから、後からあれこれ言うのはケチをつけてるとしか言えませんし、外野たわごとです(かなり反省しております)。で、無銘ですから流派が気になりますが全然思いつきません。デザインからみれば江戸後期の正阿弥系しか思いつかないのですが・・・桐箱の箱書を信じて江戸中期の赤坂? まさか京透なんてことにはならないと思いますが。しかし、これも当店の勘違いなんてこともありうるかもしれません・・・ぬははは。

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