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INTELLIGENCE

♮ 封印した上古刀経眼の見解

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

既述の上古刀についての続きを書いておく。

この事件以降(2〜3年後と思う)であるが、私は知人の尽力で日刀保会津若松支部の研究会に行くことになった。そして、支部長のY氏から上古刀5本のうち、3本を拝見することになり、見解を求められる事になった。あと他の2本は展示会に貸し出されていた為、未見となったままである。

 

私は本音をいえば、3本を見たくはなかったのである。Y氏は私に、某刀工は自分から上古刀を見せて下さいといって、その素晴しさを賛嘆し、おまけに写を作らせて下さいとまで頼んできたなど、色々と説明されたし、その熱意は本当に善意の愛刀家であるし、出土刀や郷土刀の研究文を日刀保の『刀剣美術』にも寄稿されていた真面目そのもの研究家、愛刀家である。

私は3本のことよりも、Y氏をどのように説得したらよいか、本当に迷い、困ってしまった。であるから、私の見解はついに明言しなかった。従って、Y氏は私に少し?を持たれたかも知れないが、私にとっては口が裂けてもいってはいけない、という思いがあったからである。つまり、全くの善意の行為が、かくも大きな波紋を起こす。これは、指定品になったからというか、強引にしようとしたからである。

どうして、その指定に関与も関係もしていない私が、判決文を読まなければいけないのか。これをわかってもらいたいとY氏に遠回しにソッと表現を変えて言ったが、残念ながらあまり効果はなかったようである。

 

永仁の壷事件以後、小山富士夫氏は以前と違って、酒を大量に飲み始め、箱書も大いにやったというが、小山氏の人生はあの事件で事実上の終わりであったとされる。つまり、中間で関わり、利を得た人間がいる反面、全くの善意な人が刀に対して、ややもすると、懐疑的になり、果てには、刀はロクな奴が触っていないというような感覚で見られる。勿論、既述の加島氏、小野氏も善意での?を呈したと信じているが・・・。

こうした悲劇を繰り返さないためには、早く正確無比な科学鑑定の道(非破壊)が完成・導入され、公正な判断がされることを願うのみ。いや、その前に役人の能力と性格と品性を正しく検査する装置を完成させるのが先であろう。
(文責・中原信夫)

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