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INTELLIGENCE

♮ 曖昧な修飾詞でお茶を濁す

Copywritting by Nobuo Nakahara

最近は刀剣雑誌も多くなって、一般書店で種類も多く出版され、豪華写真版で印刷されていて、すぐ買えるお手頃値段。

ごく最近、知人から一冊の本(冊子)をいただいたが、登場するのはよくマスコミにも登場する小説家・居合道家であるが、全くナンセンス極まる刀知識しかなく、たぶん、誰かの受売であろう。一般の方を刀の魅力に引き入れていただくのはむしろ結構であり、私にはとても出来ない芸当であるから、悪いと言える道理はない。この冊子に登場する刀工も、素人の小説家や読者に説明しているが、果してそれが本当なのか、小説家と読者には隠している秘訣など絶対に見破れない。つまり、適当に言いくるめたらそれが本当と読者各位は思っている。

 

やはり、どのような技術もその分野に精通した知識と見別ける眼を持った人が解説しないといけないが、そうすれば仲々、素人さんには歓迎されない傾向がある。

つまり、その理由の一つに玄人(専門家)はこむつかしい専門用語を多用する傾向が多いのである。こうした点も「刀」を一般から遠ざけてしまっていると考えられる。

 

以前、『刀剣美術』(現・公財・日刀保機関誌)に刀の解説を書く学芸員が、突然「塩合」という語句を用い始めた。この塩合とは「しおあい」と訓み、平たくいえば「匂口や刃文の調子」というのと同義である。この塩合は江戸時代の刀の刊本に使われている語句であり、私の知る限りでは、この某学芸員が突然使い始めたと思う。それにしてもこの学芸員、何にかぶれたのか知らないが、江戸時代の語句を使うのなら、刃文(乱刃)も「亀文」と言えばいい。そこまで徹底すれば大したもの。

また、違う学外員は「ムクリとした乱」なる表現を使っていたが、これは長舩長光あたりにある“角張った五の目”のことであるが、そんな事を知らない愛好家から何の関係もない私に「ムクリとした乱」というのは何でしょうかと尋ねられ、“角張った五の目”です。丸い形ではなく、四角い形の五の目乱ですと説明したが、聞いてきたのはそれも一人や二人ではない。

「先へいって小切先に結び」とかいう表現も同じで、“先へいって小切先になる”と書けばすむこと。曖昧な修飾詞を使い、字数を多くするだけで、本質をほとんど語らない。

これでは売らんかなの無責任刀剣商のカタログとチョボチョボの次元。もっとも、簡単明瞭に本質を語るむつかしさは、極めて大きく生易しいものではないが、何とか努力していただきたいと念願している。

因に、曖昧とファジーとは次元が違うのであります。
(文責・中原信夫)

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