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♮ 一振の追憶 その25(清光)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

刀  銘
清光
延寶四年余月二ツ胴入土壇 村井三郎衛門長昭(花押)試焉(金象嵌)

刃長/二尺一寸三分五厘、反/六分弱、本造、中心は生で孔は一つ。行の棟。鎬は高い
 
 
[地肌]
板目肌が流れ心になって、澄(すみ)肌が交じり、鎬地は柾目肌が流れ心となる。
[刃文]
匂出来で小沸がよくついた五の目乱に尖り刃、五の目丁字乱が交じり、矢筈状の箱乱、片矢筈状の乱が交じって不整。刃中に足が入り、刃縁から刃中に掃目がよく所作する。
[鋩子]
乱込、先は小丸で返はほんの少し。

 本刀は古刀最末期頃と思われる加州清光です。この加州物、殊に古刀期と思われる作の研究はまだ殆ど未解明に近いのです。従って、本刀も少しの時代の変動はあるかと思っていますが、地元の研究家の指摘を待ちたいと思います。

 なお、本刀にある截断銘(金象嵌)は、誠に素晴らしいものであって、加州金工による平象嵌ではないかと思われます。

 

 一般的に地方での截断銘、殊に金象嵌は至って少ないとされますが、中でも加賀国は江戸に次いで多く、やはり御国振でしょう。会津にも截断銘はありますが、その平象嵌の加工は会津国内で行われたのかは不明です。

 逆に截断銘が多くありそうなのに少ないのは、肥前刀です。当然、肥前刀は他藩への輸出ですし、金象嵌には多額の費用と高技術が要求される事は承知の通りです。

 因みに、江戸で試斬を職業とした人達は多くいますが、次いで多いのは金沢(加賀国)の武士であろうと思います。。本刀の村井長昭もその一人でしょう。
(文責・中原信夫)

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