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♮ 一振の追憶 その29(肥前国住近江大掾忠広)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

刀   銘
肥前国住近江大掾忠広

刃長/二尺一寸七厘、反/三分二厘、本造、中心は生で孔は二つ(内一つは控孔)、行の棟、鎬高目
 
 
[地肌]
小板目肌が殊によくつんで、少し肌立ち心となる。
[刃文]
小沸出来の直刃、総体に帯状の匂口となり、そこに金筋や二重刃状が所作する。
[鋩子]
帯状がくっきりとあらわれた直状で、先は小丸、返は深く横手辺で虎の尾状に返る。

本刀も二代近江大掾忠広ですが、俗に昔から言われている特徴から違反した作刀であります。別に違反といっても、私は特別注文の最たる作刀としか思われないものと存じます。

つまり、肥前刀一般の掟(特徴)としては、刃長が二尺を超えれば太刀銘となる筈ですが、本刀は刀銘であります。

従って、教条的な人達からみれば本刀は? となりますが、そうではなく、中心の棟等の肉置から本刀は脇指としての用途で作られた特別注文作とわかります。

二尺を超える大脇差を指していても何ら不思議ではない事は本サイトで既述の通りであります。こうした見方を是非実際に考えて頂きたいと存じます。因みに、本刀は匂口に全く叢のない上出来かつ健全な作であります。

 

又、本刀の直刃の中央下に一つ匂口が丸く脱けた様な所作がありますが、どういう訳か二代忠広の直刃によく見かけられる所作で、“掻落(かきおとし)とでも名付けるべき所作ですが、昔から名称は付けられているのでしょうが、地元の研究者の教示をお待ちしています。
(文責・中原信夫)

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