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♮ 一振の追憶 その33(源盛包作)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

刀   銘
源 盛包作

刃長/二尺五寸三分六厘、反/六分三厘、本造、行の棟、中心は殆んど生で孔は一つ。
 
 
[地肌]
板目肌に杢目が交じり総体に流れ心となって、鎬地と棟寄りには柾目肌が流れる。
[刃文]
匂出来の直刃調で、匂口は締り心。刃中に足や匂崩がよく所作し、縦の所作も多くあらわれる。
[鋩子]
直状、先は小丸状で掃掛、返は深い。

筑前国・金剛兵衛一派の盛包という極めて現存刀の少ない刀工を紹介したいと思います。金剛兵衛盛包は本刀の他にもう一振だけ経眼していますが、本刀は無銘にされたら、ちょっとランクを上げて見ざるを得ない程の上出来です。

 

金剛兵衛一派は福岡県・太宰府の近く、宝満山近辺の刀工群で、今から四十数年前にその跡地を訪れた事があります。その時の写真が確か『刀苑』の口絵に掲載されていたと思います。

金剛兵衛一派は九州の名族・少弐氏の抱工であり、少弐氏の滅亡と共に一部の刀工は肥前国尾崎近辺や豊後国、豊前国に四散したようです。同派中、経眼した最古の年紀は応永年紀(二振)ですが、この頃の同派の地肌は綺麗なよくつんだ柾目肌で、小沸出来でした。(確か正平年紀の短刀を展示で見ましたが、実見していないので・・・)

 

本刀は中心尻が剣形となっていますが、張った中心尻(中心尻が上の方より少し太くなっている状態)となり、本刀の中心が健全に残されている事がわかります。

因みに、同派には年紀も殆んど見られない未解明な点が多い刀工群です。
(文責・中原信夫)

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