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+ 所謂「腰当(こしあて)」について

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

以前、本欄に打刀や半太刀拵を太刀形式に佩用出来る方法があると書いたのですが、今回、知人の刀剣商の方から頂戴した今回の部品が「腰当」の一種です。

『打刀拵』(昭和六十二年刊・東京国立博物館編)には「腰当とは打刀を括って腰に佩くためのもので、板腰当・筒腰当などいくつかの形式があるようだが、それらの使用開始の時期についてはよく解明されていない」とある。

 

では(A)を見てください。黒革〈皺(シボ)状〉の部分の寸法はタテ=二寸二分強、ヨコ=四寸程です。この黒革の部分の所に「×」状の燻革(ふすべがわ)(茶色)のものが2個あります。この「×」状の中に打刀の鞘を通すことになります。これで打刀自体が安定し、栗型は鞘と帯の間の方にくることになるので、太刀形式の佩用となってきます。(B)

 

さて、(A)の裏面の写真を見てください。両端に「ー」状の燻革がありますが、ここに武士が腰の帯の上に紐を通して腰に固定するようで、中央にある結目の燻革で打刀の鞘を固く締めて安定させる方式です。

また、黒革の中には多分、真綿が入れられているのでしょう。見事なクッションを兼ねています。(A)はやや分厚いフトンのようなものになっていますが、久能山東照宮には板(足形状)の腰当が現存しているようです。

(C)を見てください。(A)はこれと同じものは(C)にありませんが、久能山東照宮のものは(C)の「片腰当て」と同じでしょう。

 

いずれにしても、(A)のように現存する腰当は少ないと思います。

私も(A)が初見のものですが、色んな形式のものがあるようで、それだけ一つの決まった佩用形式や使用形態には限定されず実用に供していたと考えられます。
(文責・中原信夫)

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