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INTELLIGENCE

♯ 押型と写真は適材適所で

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

前回は刀の写真について書いたが、写真が押型より優れている点は、地肌模様が写せる可能性がある事である。押型ではこの地肌は写せない。では匂口はというと写真より押型の方がはるかに上である。ただし、上手な人の刃文押型に限るが。

そんな事はない、匂口(刃文)がよく出ている写真(移まで)を載せている冊子が、かなり以前にあるではないかといっても、その写真は特殊な薬品系を塗って写したもので、刀には絶対やってはいけない事で、当時、この冊子に批判が集中した事がある。

 

銘字についていうと、これも上手な押型に勝るものはない。写真は光の当て方により拙くなるケースが往々にしてある。ただし、銘字のみを拡大するケースでは写真が優れていると思われる。しかし、この銘字の拡大は偽作者の技術を格段に進歩させるというオマケもつく可能性がある。

銘字の一点一画のみを、詳しく詳しく精査される日刀保審査員・学芸員にとっては、ある意味では脅威となるかも?・・・

 

さて、全身の姿は写真でもいい。全身押型は仲々面倒なので、写真の方が手っ取り早い方法かもしれない。

最近出版される刀の本やカタログ(美術館発行)では押型がどんどん少なくなり、反対に写真が多くなっているが、もっと本質的な内容に戻すべきであろう。上っ面だけ見て素人が喜んで見るだけの写真より、適材適所といくべきが本当で、中心については両方(押型と写真)を原寸で並べて印刷してくれるのが理想であろう。

因みに、押型(刃文)は現物の通りに完璧に描くのが本当であります。この本(前回に書いた)に掲載された刃文押型を監修者は序文で“精巧に臨写した”としているが、この程度ぐらいでは褒められたものではない。この程度の刃文押型なら楽ですなあ!!
(文責・中原信夫)

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