古の刀装具 HOME
TOSOGU OPINION SITE
鐔

左右雲版透図 播磨赤穂住正阿弥政員

商品番号 :TB-019

江戸中期 保存刀装具 桐箱入

90,000円

竪丸形 鉄地 陰透 金象嵌 打返耳

縦:7.73 cm 横:7.25 cm 切羽台厚さ:0.47 cm 耳際厚さ:0.70 cm
四方まばらに細い金象嵌が施されているのは雷紋。表は何カ所かの部分が剥がれ落ちていますが裏面は全て残っており、最初から散けて見えるように配置されているのは、画題の主役である雲版を効果的に見せるための引き立て役です。メインは透になっている雲版のほうです。陰透になったトランブのスペードを押しつぶしたような形が雲版を表していて、小柄・笄の櫃孔を兼ねてデザインされています。雲版は木の板を叩いてその音で物事を知らせるための寺院などで使われる道具です。そして透ではありませんが、下部に空いた二つ丸い孔は手抜緒孔(てぬきおあな/鞘と鐔を紐で結んで固定するための孔で鐔の研究家・鶴飼富祐氏が『新説 刀鐔考』の中で、その用途を解明・解説しています。)ですが、空けられた位置が実用上疑わしく、江戸初期以前の古作ならまだしも江戸中期の作である本鐔の手抜緒孔はおそらくデザインとしての写と思われます。
造込は打返耳というより角耳小肉に近く、そこから中心が低くなった中低の姿で、まだまだ古作の造を踏襲しているあたりが見所です。こぞって中高の鐔が作られた江戸中期にあって、中低の本鐔には雲版を画題にした事といい注文主の意向か何らかの意図が感じられる作で、緩やかな曲面にある細かな凹凸は鍛え肌の雅味に見えてきます。 本鐔の作者である政員(まさかず)は京正阿弥派の流れをくみ、京都西陣の正阿弥政徳と有縁の巧手とあります。鑑定書には「〜政貫」と記載されており、「員」を「貫」と誤読したようで、確かに員の字の口部の中に横筋があるように見え、貫と勘違いしたのでしょう。この横筋は彫った溝ではなく、口の部の上下の鏨枕が寄り合って筋状に見えた線です。これは日刀保に修正していただなくては・・・ふぅ〜余計な面倒がひとつ増えてしまいました。
ちなみに、政員は元禄頃に赤穂に居住していたということは、ちょうど忠臣蔵で有名な赤穂事件があったころに、鐔を作っていたことになります。まさか赤穂浪士の中に、政員の鐔をつけていた士がいたと考えても不思議ではありません。何しろ地元の鐔工です。付けていた可能性は高いでしょうね(憶測!憶測です・・・)。

ページトップ