縁／縦：3.78 cm　　横：2.23 cm　　高さ：0.84 cm
頭／縦：3.53 cm　　横：1.73 cm　　高さ：0.85 cm

全体に唐草紋様の花葵をあしらった華やかな縁頭かなと思えば、漆黒の赤銅地がそれを押さえて上品な印象を与えています。よく見れば微細な魚子が蒔かれていることに気付きます。花は色絵かと思えば、上質の金板を使った袋着。おやと思い、裏を見れば打出の所作が・・・厚手の造なので見た目にはすっかり高彫と思っていたのですが、しっかりと裏打出、いえ圧出といえる容彫になっています。漆黒の赤銅地に金の袋着、裏面の豊かな圧出、そして細かな魚子に高彫・・・桃山期以前の上質の目貫や小柄・笄といった小道具に通じるものがあり、彫にしても造込にしても上手です。江戸中期以降の縁頭にはない古風な趣が漂います。審査に出せばおそらく古金工と極められると思われます。しかし、疑問も・・・別作の紹介でも書きましたが、もし桃山期の作であれば、縁と頭が揃いの作例は殆どありません。やはり江戸初期と見た方が正解だと思われます。それを物語るのが袋着の所作。桃山期であれば、袋着の底際に浅いながらも刻込の跡が確認できるのですが、この作にはそれがないのです。つまり金板を鑞付する技術が進化した江戸初期の作と思われます。