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縁頭
漁村風景図 武藤政克(花押)
商品番号 : FG-013
江戸後期 保存刀装具 桐箱入
100,000円
縁/四分一地 鋤出高彫 金象嵌色絵 頭/四分一地 鋤出高彫 金象嵌色絵
縁/縦:3.82 cm 横:2.00 cm 高さ:0.87 cm
頭/縦:3.40 cm 横:1.55 cm 高さ:0.69 cm
もうほとんど山水画の世界に入り込んだ光景です。この手のフィールドに長けた方なら本作の何たるかを深く語れると思われますが、当店のような俄か似非論者にかかっては本作も不遇というもの。それを前提の上で、恥ずかしながらもご紹介いたします。(的外れな印象や感想に対しては目を瞑ってくだされば幸いです)
腰も低く身幅も狭めのやや小ぶりな本縁頭。縁の柄へと続く腰の立上りは、棟方側より刃方側の方が僅かに傾斜があり、柄の立鼓のラインを想像すれば短刀か小脇指に使われたものでしょうか。実際、空けられている中心櫃孔の大きさからも入っていた中身のサイズが伺い知れます。本作が作られたのは江戸後期ですから、本作が装着された拵を腰に指した侍が想像できそうです。画題のイメージからして、さぞかし真面目な事務方でしょうか? なんか武闘派の侍には似合わなそうな・・・質素な部屋で書物を読む侍の姿、あるいは茶会での姿をイメージしてしまいます。
造は四分一の地金をほんの少し内側から打ち出して高彫にしています。鑑定書には鋤出高彫の文字が・・・この僅かな隆起でも鋤出なんですね(恥ずかしながら知りませんでした)。作域は極めて繊細で緻密な彫によって、風情のある景色を醸し出し、その遠近感を意識した構図は朧げな漁村の風景を描いた水墨画のような風合いを作り出しています。情景の下部に当たる縁には磯から舳先を覗かせた舟と波、上部に当たる頭には茅葺屋根(?)の家屋と松の木、その先に干網が描かれた漁村の一角を描いた構図は、単に印象的な景色を表したものなのか、それとも長閑な時間を表したものなのか、見る人の感性を試しているようにも思えます。特に家屋の風情は、さも古そうな寂れた感じが印象的です。
因みに色絵ですが、金色絵の他に銀、そして赤銅も使われているかもしれません。何ヶ所かそれと認識できる色合いを見てとれますが、地金が擦れてそう見えているだけかもしれません。作者は武藤政克。岩本昆寛の門人で正甫同人のようです。