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笄

老松岩に藻貝図(無銘・古美濃)

商品番号 : KG-034

室町後期 重要小道具 桐箱入(寒山箱書)

売約済

赤銅七子地 高彫据紋象嵌 水玉金象嵌

長さ:22.3 cm  幅:1.20 cm  高さ:0.48 cm
日刀保の展示品にもなった第二十回重要小道具の笄です。巡り巡って何故か当店で紹介する運びとなりました。ご紹介するからには、良いところは褒めますし、疑問に思うところも書こうと思います。なにせ、手元に現物があるのですから、感じたままを伝えようと思います。そしてこれを経眼したいと思う方は、遠慮なくお越しください。そしてご自分の目と手で確かめていただければ幸いです。
古美濃と極められた本笄。細身です。指定書には幅が1.2ミリとありますが、実際には1.17ミリぐらいです。細身ながらふっくらとした肉置、締まった首は室町後期の作の中でもかなり古い造と思われます。この形状から極は古美濃にいきます。画題のデフォルメも古美濃です。レイアウトも古美濃です。地金はまさに潤いのある漆黒、七子は細かく整然とし、よくある古美濃の時代笄とは一線を画します(ただ古いだけに埃が詰まっていますが・・・)。そして何より上品です。この品格は、実際に経眼しないと伝わらないかもしれません(なので、私を信用していただくしかありません)。
ここで指定書には記載されていないことを一つ・・・水玉金象嵌とありますが、実際は金象嵌の他に銀象嵌も確認できます。これを記載しなかったのは何故でしょうか。えー、時代の辻褄が合わなくなるのを恐れたのでしょうか。代わりに普段は記載することの少ない「高彫据紋象嵌」の文字が。通常、古美濃であれば鋤出高彫なのですが、据紋象嵌で古美濃とするのは不思議な感じがします。確かに本笄の紋は鑞付据紋の所作。古美濃の最大特徴の一つである鋤出彫でない作を古美濃としたのは、まさか紋のデフォルメイメージ? う〜ん、古美濃って難しい領域ですね。しかし、敢えて高彫据紋象嵌」としたことには賛同しますし、勇気ある極で拍手を送りたいと思います。
その彫ですが、いや〜繊細です。小さな部品を組み合わせたミニチュアのようです。ここで最大の謎・・・何故、老松に岩、そして藻貝なのでしょうか。相反するような組合わせです。いや、まてよ、これらの組合わせは・・・海岸の風景・・・なるほど、海岸の風景を切り取った縮図ですか。となると、その意味は、長寿と豊かさ・繁栄。この発想、恐れ入りました。おっと法螺貝らしき絵も。武勇まで込めるとは脱帽です。

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