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笄

蔓枝図(無銘・古金工)

商品番号 : KG-036

桃山期 保存刀装具 桐箱入

売約済

山銅七子地 据紋 金色絵

長さ:21.9 cm  幅:1.30 cm  高さ:0.58 cm
画題は蔓枝図となっていますが、種類はわかりません。金が施された粒々も実なのか花なのかわかりません。なので蔓枝です。画題はこれぐらいにして、そのフォルムは古いデフォルメ感があり、彫りもこんもりと立体的です。体配は俗にいう時代笄や古笄の姿を踏襲してフックラとし、耳から肩にかけてのラインも緩やかに弧を描き厳つくありません。まさに桃山以前の古い姿です。地金は少し緑がかった山銅です。そして紋は少し濃く見えます。七子が蒔かれた地板も本体よりも黒く見えます。おや?と思い、裏を見たらありました。リベット痕が。裏からリベット留めした据紋です。これはかなり古い笄かと詳細にみていくと・・・不思議な所作や合理的じゃない点が浮かび上がってきます。まずは色絵・・・室町ならウットリか袋着を期待するところ、擦れから見て蒸着による色絵。蕨手も同じ・・・これなんか、明らかに後補の所作。しかし、リベット留めです。もしかして紋も後補?・・・そういえば紋は額左右いっぱいの大きさです。不自然です。おまけに色合いも地金と異なっています。推測ですが、室町後期に作られたリベット留めの笄に、紋に問題が出て桃山期か江戸初期あたりに現在の紋を据え変えた。その際、蕨手にも色絵を施した・・・リベットの色も確認すると、やはり地金より黒く、紋や地板の色に似ています。つまりは、リベット留めの所作も含め、紋と色絵は後補の所作とするのが極めて合理的です。もうひとつ・・・紋には所々に小さな凹みがあります。おそらくこれは露象嵌の下処理です(露玉を入れる穴ではなく平象嵌ですが、この所作も時代的には江戸初期以降に多くみられるものです)。実際に象嵌がされなかった理由は不明です。
本笄を整理すると、作られたのは室町後期。何らかの理由により桃山期から江戸初期頃に紋を後補。ただし、リベットに関しては時代設定を保留です。こうなると厄介です。本笄の時代をどう極めるのか・・・一般的には紋の時代を優先するケースが多く、その視点からは本作は桃山か江戸初期ということになります。しかし裏からのリベット留めをどう見るのかです。この所作、つまり造込に視点を当てれば、本作は室町後期の作ということになります。鑞付据紋の技術が発達した桃山期から江戸初期以降にわざわざリベット留めをするでしょうか。ハッキリしているのは、古い体配をしている笄だけど蕨手は後補だというぐらいです。探れば謎だらけの笄・・・妄想は尽きません。

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