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笄

塩屋図(無銘)

商品番号 : KG-051

江戸前期 桐箱入

30,000円

山銅七子地 高彫 金色絵

長さ:23.5 cm  幅:1.36 cm  高さ:0.55 cm

何の画題かわからず、図柄を順を追って確かめてようやく理解できたのが塩屋図。はじめは老夫婦が餅つきをしている図柄にしか見えず、そんな物語はあったっけ?と思い返せど出てこず・・・右端の波を老婆と思い込んだのがいけなかったようです。この構図は左から、老松、家屋(塩屋)、塩を汲む人物、桶、波飛沫に貝・・・塩屋を一つの光景として描いているわけで、画題なんか「塩屋図」でも「塩汲み図」どっちでも良いのです。
ずいぶんと手の込んだ複雑な構成のわりに、彫の所作は褒められたものではありません。本笄の体配は時代笄の類で数物です。大柄で膨よかな体配をしていますが、彫口は粗くザックリとした所作。特に際端の側面(立上)には鑚跡が所々に残り丁寧さは微塵もありません。それでも、無垢の塊から彫り出した痕跡が見て取れ素朴な手作り感は好印象です。地に蒔かれた七子は、粒というより凸凹した荒地のようで、右端上部には波地が彫られています。特徴といえば、切立った美濃に近い彫口。なので個々の図柄が独立して見え、それがまた稚拙というか子供が描いた絵のようです。まさか美濃ではないのでしょうね。内陸の美濃で塩屋を描くとは、少し考えにくい図柄ですが。
問題は製作年代で、非常に悩める要素が・・・一つは松のデザイン。桃山期以前の松なら、このような葉を横から描いた形ではなく菊の花のような円形の集合体。本作の松は江戸前期以降に見られる形状です。そしてもひとつが一連の光景を描いた図取りで、画題における物のデフォルメ感の強さよりも一枚の絵として伝えるというイメージが強く読み取れること。・・・無垢の肉彫、山銅の時代笄じゃないのかというご意見も承知していますが、この手の作は幕末にもあることを踏まえれば、本笄を桃山期には極められません。やはり江戸前期が精一杯のところだと思われます。
最後にもう一つ、本笄にはなんと鍛割があります。棹の上部表面に刀と同じような鍛割が、先端近くには穿ったような凹みがあります。数物の刀にはよくある所作ですが、数物とは言え笄にもあるんですね。なんか帰って愛着が湧いてきました。皆さんにはこの疵も踏まえて評価をしていただければ幸いです。

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