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笄

羽根束図(無銘)

商品番号 : KG-053

室町後期 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫(据紋)

長さ:21.4 cm  幅:1.38 cm  高さ:0.70 cm

さも古そうな山銅の時代笄です。蕨手もありません。少し赤みを帯びた色合いが時代を感じさせます。幅広な本体はごっつい印象ですが、長さはほぼ定寸。これは先が欠損して現在の長さになったことは明らかです。時代笄の類ですから、本来はあと1〜2cmはあったはずです。ちょっと残念ですが、桃山期はあろうかという作ですから残されていることに感謝すべきで致し方ありません。
時代笄といわれるものには紋が簡素な彫のものと、本作のようにこんもりと肉置豊かに彫られたものがあります。前者は古美濃のような山が低く隙間だらけで素朴さがあり、室町後期頃の作に多いと推測されます。本笄は山高く肉置が大胆で迫力と存在感がありますが、時代は少し下がって桃山期に多いと思われます。そして数物です・・・山銅で七子の粒も大きく乱雑です(ここら辺が手作り感があって魅力なのですが)。で、通常は無垢の肉彫が圧倒的に多いのですが、本笄は据紋です。据紋といってもリベット留なら時代も上げられる所作になりますが、本作にはどこにもその痕跡らしきものがありません。いや〜目が涙滲みるぐらいルーペで小探ししたのですがないのです。あきらめて、肉眼でちょっと遠目に眺めていたら、・・・ありました。リベットの丸い痕がかすかに確認できます。裏面の真ん中あたりと上部に計二つ、おそらく下部にもあるはずです。となると時代は上がって室町後期はあります。古そうに見えた直感は正しかったようです。(こうした所作を踏まえて、古い作をもっと評価するべきだと考えているのは当店だけでしょうか。見た目の健全度や品質も重要ですが、古美術としての価値を忘れる、または無視するのは如何なものかと・・・本作のような数物が嘆く声が聞こえてきそうです。)
おっと、画題を忘れていました。一応、羽根束としましたが、合っているでしょうか。戦で使う軍配のようなもの? それとも煽ぐ扇のようなもの? はたまた矢作りの材料となる羽? 見方によっては粟や万年青のような植物にさえ見えます・・・正確な画題はわかりませんが、この紋にはもともと金鍍金が施されていたようです。その痕跡が元の方に僅かに残されています。数物にしては贅沢な所作・・・それにしても古い作を見るたび、疑問だらけで袋小路に迷ってしまうのが小道具。その悩ましさが面白さと魅力でもあるのですが。

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