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笄

三疋獅子図(無銘)

商品番号 : KG-054

江戸前期 桐箱入

売約済

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金色絵

長さ:21.1 cm  幅:1.23 cm  高さ:0.57 cm

お馴染み定番の画題、獅子の笄です。龍そして獅子、この二つの画題は武勇を真髄とする武士にとっては最も好まれた画題かもしれませんね。本笄は三疋獅子、構図も配置もなんら特徴のあるものではありません。良く言えばスタンダードで真面目、悪く言えば面白みも工夫もない堅物な代物です。おまけに作数も多く、ご紹介するにあたっては説明が難儀な類で、愛好家はじめ皆さんの評価基準を知りたいくらいです。それでも拵に装着すると様になるのがこの手の小道具なのです。ま、厳密には一つとして同じ作が無いのも刀装具の魅力、それぞれの相違や見どころを探すのも楽しみの一つです。 それでは紋から・・・左と中央の獅子は互いに呼応しているかに見え、左の獅子がその様子を「お前ら、何やってんだ」と気にかけて顔を振り向けている・・・こんな風に勝手にシーンを想像するのもありかと。台本を書けば物語の筋は描き放題です。その獅子の中で真ん中だけ金色絵が施されていません。見方によれば、中央の獅子は雌と捉えることも可能かと。いや、やっぱり赤銅の本体との視覚効果を考えてのことでしょうね。全て金色でも、中央だけ金色でもいいのですが、左右どちらかだけ金色はちょっと違和感があります。でも、これはセンスの問題として片付けます。
肝心の作域ですが、彫は細かく思った以上に巧みです。強弱があり紋も高く、特に右の獅子は山高く彫り上げています。木瓜班も刻まれ、それぞれの彫口が後藤家の所作に当てはまっています。だからと言って、後藤家の作に持って行くには当店として自信がありません。別に否定するような所作はないのですが・・・かなり黒い赤銅地の本体、整然と蒔かれた細かな七子地(額の地板は嵌込)に獅子を鑞付据紋にしています。本体の肉置は薄めで長さも定寸、少し厳つい首から肩へのライン・・・江戸前期から中期ごろの作だと思われます。極は後藤本家に行くなら栄乗・顕乗(ちょっと背伸びしすぎ)、おそらく脇後藤とするのが無難なところですが皆さんはどう極めますか・・・審査に出すと京金工の可能性もあります。

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