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笄

割笄

独楽図(無銘・古後藤)

商品番号 : KG-062

室町後期 保存刀装具 桐箱入

売約済

赤銅七子地 高彫

長さ:22.4 cm  幅:1.27 cm  高さ:0.45 cm  紋部高さ(最大):0.64 cm

割笄というと江戸中期以降に現れ始め、流行に乗ってか特に江戸後期の作が多く、ここに紹介する江戸初期以前の割笄はかなり少ないと想像しています。まず、割笄は江戸前期にはなかったということであり、あるとすれば、それまでの笄を2つに加工して作り直したものです。笄直の小柄ならぬ「笄」の「割笄直」なのです。ですから、本体は、2つに切断された際の削りカス分の幅が無くなり、元幅より狭くなります。結果、画題が彫られた紋は、少しチグハグなフォルムになり、線や肉置が合わなくなるのです。ただし、削られた分の隙間があれば違和感はあまりないようです。
本笄の隙間も、きっちりと合わせた状態でも隙間ができています。これは意図的に隙間を作っているのか、歪みや切断の叢で空いているのかわかりません。ユニークなのは別れた2本の本体を簡単に合わせやすくするために、合わせの突起を誘導する溝が施されています。なんと親切な所作・・・これがあることでサッとスムーズに合体できます。
で、肝心の笄自体の正体は、無赤銅の地金からの高彫。もちろん鑞付の据紋ではありません。本体は若干薄めの造で紋部は高く盛り上がった豊かな肉置。画題の独楽を大小合わせて20数個を、繊細に山高く谷低く彫り上げた上手作。一見、植物の花か実が咲き誇っているようにさえ見えます。首から肩にかけてのラインも厳つくなく、丁寧な彫口と相まって上品な印象を受けます。時代はおそらく室町後期。真黒な赤銅とこのデザイン、作域を考えれば古後藤に違いないでしょう。あわゆくば乗真としても不思議ではありません(実在していればの話)。本笄、無赤銅ながらかなりの上手作ではないかと。
そんな笄を当時の流行とはいえ真っ二つにしてしまうのですから、恐れ入ります。しかし、なんで二つに割ったのでしょうか? 巷の本では箸として使ったとか紹介しているのもありますが、当店は信じていません。一旦、口に運んだ不浄な笄を装着して上司の前に出るなど考えられません。笄は髪を整えるものというのが一般的な認識ですが、これにも疑問がつきます。実際、頭に触れた、やはり不浄なものを装着して面と向かえるのか甚だ疑問です。じゃーいったい笄の正体は?・・・わからないのです。それほど曖昧で謎だらけの笄。といっても、現に存在して愛好家たちの目を楽しませてくれています。どなたか、肯定できるような説をお持ちであれば、ぜひご教示願いたいものです。

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