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笄

丸に洲浜紋二双図(無銘)

商品番号 : KG-064

江戸中期 桐箱入

40,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋)

長さ:21.2 cm  幅:1.24 cm  高さ:0.34 cm  紋部高さ(最大):0.39 cm  重さ:29.84 g

全身ツルツル状態、額内も磨地かと思わせるほど滑らか・・・七子地じゃないのかと疑って隅の方を見れば、確かに粒々が覗いているじゃないですか。ルーペでくまなく舐め回すと、紋の中とその周囲、そして地板の周囲を辿るようにぐるっと縁際をを一周するかのように七子粒が残されています。いや〜使い込みましたね、あっぱれです。ここまでツルツルになるまで、よくまあ大切に使ったものだと感心します。指先と触れる個所が根こそぎ擦れてなくなり、かろうじて指の侵食を逃れた隅や縁に貴重な七子が生き延びた状態なわけです。それでも、目立った疵もなく意外や綺麗な印象。 この見事な擦れ具合は七子粒だけではないようで、本体そのものもそれなり以上に擦れの効果が見てとれます。姿がなだらかです。耳から首、肩、胴から竿先に至るまでのラインが丸味を帯びて、優しくアンニュイ姿で、少し古風な雰囲気さえ漂います。薄い造の体配も相俟って、見るからに華奢で繊細な姿は、女性のか細さを連想させるほどです(色気があるとは言っておりません、誤解なさらずに!)。
地金は赤銅ですが、真黒ではなくどこか白っぽく四分一の風合いが混ざった感じがします。おそらくこれは錯覚で、このツルツル状態の擦れが赤銅に働き、鈍さを伴った風合いに見えてしまうためでしょう。ちょっとした色白美人といったところでしょうか。画題となっている紋は丸に州浜紋を二双。丸の中の地には、七子地が蒔かれ、これはちゃんと残されています。時代は体配からすれば江戸中期頃から後期、しかし七子の擦れを考慮すれば江戸前期としても不思議ではありません。ただ、画題がが家紋なだけに、流派を絞り込むのは無理難題というもの。江戸の時期、この洲浜紋は関東に多いようで、特に北関東の武家が使用していたそうです(信憑性はほどほどです)。しかし家紋であるからには注文品でしょうし、一概に数物だ、上作だと決めつける作ではありません。それよりは、本笄の見所と言って良いのかわかりませんが、この時代が作り出したツルツルの質感を味わっていただきたい一品です。

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