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笄

葡萄図(無銘・古美濃)

商品番号 : KG-066

桃山期 保存刀装具 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫

長さ:22.4 cm  幅:1.47 cm  高さ:0.44 cm  紋部高さ(最大):0.46 cm  重さ:47.70 g

時代笄で古美濃と呼ばれる類の中では定番の葡萄図。紋自体は簡素で素朴な構図、幅広で大柄な画角の領域に対してスカスカです。高さも本体の厚さを超えることは殆んどありません。七子が蒔かれた地板部の平地は、上手作に見られる緩いアール状ではなくほぼ平坦です。現代の金型でガシャコンしたかの風合いは、大量生産品を印象そのもの・・・数物と言われる所以です。これはこれで愛でるべき特徴であって、古さをストレートに感じさせてくれる点では好ましい作域だと思うのですが。
本作は特に平地が平らに見え、七子粒も細かく見えます。ルーペで見ると、おっと、粒々が結構不整い。でも地は随分と平坦だなぁー・・・美濃彫の最大の特徴でもある鋤出彫だからでしょうか?・・・垂直の彫口は理解できるのですが、平らに削った平地はこれほど均一に彫れるものなのか。これが腕前だとか技なんだと言ってしまえばそれまでですが、そっちこっちと遮る紋を挟んで総体に均したかのように均一な平地。紋がなければ整えるのも難しくはないけれど、紋が邪魔してここまで均せるものなのか? 凸凹になったり、傾斜がついたりしそうだけど・・・もしかして、紋は鑞付? 紋の立上り部分に不可解な塊やらバリっぽいものがあるけど、これは鑞がハミ出た痕跡では?・・・鑞付据紋、有りえますか。重要刀装具になった高級な古美濃の作でも鑞付据紋がありましたからね〜。であれば数物にあっても不思議ではありませんよね。と、言いながらも肉彫の可能性も否定できないところがジレンマ。 どのみち、日刀保さまの鑑定では、鑞付据紋も高彫の一つ、大きな問題とは捉えていないようです。(よくよく考えれば時代の極に大きく影響すると思うのですが・・・)。
その紋ですが、本笄の葡萄の彫にはちょっと見られない所作が刻まれています。所々(7カ所)に枝を断ち切るかのような切込跡があります。これは一体何を表したものなのか全く不明です。打疵などではなく、意図的な切込(打込)で、強弱やアクセントを表現したものかもしれません。それとは別に打込の疵もあり、胴の両側面に斜めについています。打込というより削ったような所作で、こちらも意図的につけた疵痕です。悪戯には思えません。何らかの理由でその個所の横幅が膨らんだのを修正したかのような感じなのです。このように色々と訳がありそうな本作、ここまで残されてきた逞しきごっつい姿もまたいいもので、そして造からは古美濃という存在を改めて問い直せと突きつけられた作品です。

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