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笄

波に貝尽図(無銘)

商品番号 : KG-106

江戸初期 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫 金色絵

長さ:22.8 cm  幅:1.30 cm  高さ:0.42 cm  紋部高さ(最大):0.52 cm  重さ:43.56 g

画像からはよく判らないかもしれませんが、本笄の地金の色は山銅と赤銅と四分一が混ざり合ったような色合をしています。体配と作域はあからさまに桃山期から江戸最初期の姿をしており、そこから推測すれば四分一の線は微妙なところ。なので無難を期して山銅地とした次第です。色揚した肌合いは江戸最初期以降の質感のようで、健全な本体の保存状態を踏まえれば、本笄の制作年代は江戸最初期が妥当と思われます。
画題は波に貝尽。貝尽といっても、左から栄螺、亀の手?、またまた栄螺(法螺貝?)、雲丹の四つが同じぐらいの大きさで中央にどかっと配されていて海の幸といった方が正しいかもしれません。それはよいとして、背景となる砂地の表現が独特で、見方によれば天地のバランスが崩れているように見えますが敢えてそうレイアウトしたのでしょう。その要因は左右の両端にモッコリと彫られた砂浜で、かなり立体的かつ膨よかに表現されています。その間に波に洗われる海の幸。しかし、上部(天)の際には一段低くなった七子地が蒔かれており、これも砂地とみれば、海岸べりに打ち寄せられる海の恵みを描いた一光景かと・・・簡素ながら遠近感も取り入れるという何とも複雑な構成にしたものです。
この額内の紋、本体(無垢)からの高肉彫と思いきや、小縁の際に半欠け状の七子粒が並んでいるのです。おや〜、これは地板嵌込の痕跡。ハッキリとはわかりませんが、紋自体も複数のパーツで出来ている可能性があります。技術的に可能であれば、彫の失敗によるリスクを回避でき合理的な手法です。現に江戸前期以降の笄・小柄のほとんどは鑞付据紋方式、そして地板も嵌込方式です。こうなると、江戸前期という制作時代はほぼ疑う余地がなくなります。ただ、体配がふくよかで大振りな姿はまだ桃山期の面影を残しており、江戸期に入ったばかりの江戸最初期の作という推測に・・・色絵の所作、図柄の取り方もそれを裏付けているといって良いでしょう。図柄なんか桃山期以前ならもっとシンプルで、砂浜をこんな写実的には描かないと思うのです。しっかし、独特の構図ですね〜、嫌いではありませんし、どちらかといえば好みです。

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