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笄

蝶三双図(無銘)

商品番号 : KG-109

江戸中期 桐箱入

80,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋)

長さ:20.7 cm  幅:1.23 cm  高さ:0.32 cm  紋部高さ(最大):0.44 cm  重さ:29.80 g

蝶が三匹、真ん中の一匹が上向きの反対方向にレイアウトされただけの単純な紋に見えますが、よーくよく観察して仔細に見較べて見ると面白いことに気づきます。僅かながら三匹には違いがあるのです。さ〜て、どこでしょうか? (上下の向きの違いは除外です)まるで間違い探しのパズルをやっている気分になってきました。・・・翅に注目、違っているのは三つずつ描かれた斑紋(目玉模様)です。右の蝶のそれは菱形っぽい四角形、左の蝶は三角形、そして真中の蝶は丸形をしているのです。単なるデザイン的な遊びなのか、それとも意味合いを込めた表現なのかどちらなのでしょう?紋の彫口は決して褒められません。結構アバウトで緻密でもなく、蝶全体のフォルムもこじんまりとして魅惑的な怪しさは感じられず、不恰好な蛾といった感じです。こんな作域からみれば、本笄は赤銅地とはいえ上手の作ではなく至って普通の作ですから、ちょっとしたデザイン的なこだわりを見せたのかもしれません。しかし、形の違いはこうとも考えられます・・・真中の蝶は斑紋の形が丸なので雌。左右の蝶は三角と四角なのでそれぞれが雄。レイアウトに動きはありませんが、雌をめぐる雄同士による求愛の構図ではないかと。獅子や鳥などの画題ではよくある設定です。妄想が飛躍しすぎでしょうか(ふふふ、当店が無理やり意味合いをこじつけて、本笄を良く見せようとしているのかも・・・)。
長さは定寸(約七寸)に近く、薄い体配で華奢な姿。紋は鑞付据紋ですが、額の地板は嵌込ではなく本体から削り出して七子を蒔いています。まあ、これだけ薄ければ地板を別に作って嵌め込むのは難しいのかもしれません。制作時代は江戸中期で、作域は京金工あたりか地方の金工作ではないでしょうか。審査に出せば、古くからの蝶のフォルムをしているので古金工に極められる可能性はあります(無保証)。因みに、この蝶のデフォルメは幕末まで見ることができます。江戸中期頃から町彫による違ったフォルムが出始めますが、スタンダードとも言えるこのフォルム(後藤家から始まった?)は日本独特のデフォルメで、何ともいえない怪しく幻想的な魅力を感じます。

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