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笄

唐松図(無銘・時代笄)

商品番号 : KG-220

桃山期 保存刀装具 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫

長さ:21.8 cm  幅:1.48 cm  高さ(紋部最大):0.43 cm

紋も含め厚みは約4ミリ前後、山銅の時代笄と呼ばれる類の中でもかなり薄い体配をしています。横から見ると紋は肩や胴の厚みとほぼ同じ、ペラペラの造です。例えは変ですが、板チョコならぬ板笄と揶揄されそうな本作。俗に言う数物ですから、驚くほどでも珍しくもありませんね。色絵もなく山銅の風合いのみで真っ向勝負です。ただ、紋の作域は美濃風の鋤出彫で、腰は低いのですが肉彫の風合いと素朴な構図に味わいがあり好印象です。
画題は唐松。老松でも通ります。松の葉は古い作の定番ともいえる菊花に似た円形のデフォルメ。枝振りが特徴的で直線を組み合わせたような展開。写実的な表現は微塵も感じられず、パターン化されたフォルムはある意味デザインチックな印象を受けます。まあ、彫る作業もやりやすく合理的なデザインというか・・・これと極めてよく似た作が『金工美濃彫』(小窪健一著)に載っています。紹介文では「造りこみや彫りが粗雑で、地は鋤下げのままである。この手のものは大量に作られたものとみえ、現存品も多い。桃山から江戸前期にかけての仕入品であろう。」とあり低評価。う〜ん、仕方ありませんね、事実そうなんですから。それでも、本作と寸部違わず全く同じものはないと思いますし、あったとしても個別の個性を愛でたいものです(何故か強く主張できないのがもどかしいです)。
そんな本笄ですが、鑑定書(平成十三年発行)に見慣れない文字が・・・区分けの名称が美濃や古金工ではなく「時代笄」となっています。え?、時代笄?・・・当店としては初めて目にする文字。確かにその通りに分類されてる作ですが、時代笄とは巷での俗称だとばかり思っていました。美濃や古金工や京金工などと並んで時代笄という分類があるんですね。当店は目にしたことが一度もないので、ある一時期だけ使われた分類なのかもしれませんね。(今度、日刀保様に聞いて見ます。)おそらく、個別の区分けが難しいけど古い笄だということで、この極になったと勝手に解釈しましょう。しかし、美濃彫研究の第一人者であった小窪氏の著書に類例作が載っているし、作風は美濃に類似しているし、どうして美濃・古美濃に極めず時代笄としたのかが判りません。どこかが違うのか?当てはまらないのか?・・・美濃彫の代名詞でもある鋤出彫に比して、本笄の彫は腰が低すぎるのかなぁ・・・詮索は別にして、古い笄には違いないということでご了承いただければ幸いです。

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