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笄

鞭に手袋図(無銘・古金工)

商品番号 : KG-225

桃山期 保存刀装具 桐箱入

売約済

山銅七子地 高彫

長さ:22.3 cm  幅:1.33 cm  高さ:0.50 cm  紋部高さ(最大):0.58 cm  重さ:54 g

肉付きの良い体配をした時代笄ですが、紋が山のように盛り上がった類例に比べ本笄は控えめな丘といった肉置です。画題の鞭と手袋という形状ですから、意図的に彫らない限りボコボコと凹凸のある紋にはなりませんよね。でも、同じ画題でそういう作域も見てみたい気がします。現品はちょっと大人しい雰囲気で厳つさもなく、数物としては上出来です。七子地も他の時代笄と比べてかなり細かく整っている方です。ルーペでないと判りにくいかもしれませんが、実際は紋以外の平地はそれなりに波打っていたり鑚で削り整えた痕跡が見て取れます。如何せん、赤銅の上手作との違いは、こういうところに表れるのでしょう。作域は鞭と手袋、そして紐のフォルムをきちっと彫り上げ雑な所はありませんが、毛彫による細かい表現をもっと拘ってくれたら一段も二段も完成度が高まったと思われ、ちょっと残念。この手の作に、それを期待してはいけないことはわかっています。何より素朴な味わいが消えてしまい、“らしさ”がなくなります。
ところで、画題にある手袋ですが、初めて目にする題目です。鞭というと、大概は鞍や四方手・轡などの馬具との組み合わせが多いのですが、手袋との組み合わせは未見でした。戦国期の時代にもあったのですね(無知をさらけだす当店)、手袋が・・・本作の手袋には切れ目があるようです。スッポリと嵌める形状てはなく覆い被せるような形状に思えます。そういえば、鷹匠道具にこの手の手袋があったような・・・そうです、手袋はあったのです!(この無知な当店に鞭でお仕置きを・・・)
もう一つ、気になっていた点があります。それは山銅の色合い。所々に黒っぽいのが交じっているのです。特に額内の平地には広い範囲に残されています。これは一体? 保護する目的の漆でしょうか。でも漆ならもっとコッテリと七子の隙間にも残って良さそうな。もしかして墨? 墨は銅に馴染むと聞いたことがあります。断言はできませんが、墨ならこの残存状態が頷けます。仮に墨だとしたら、何のために? 保護? いやいや、赤銅に見せるため、なんちゃって赤銅に化けさせたのかもしれませんね。

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