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小柄
蔓瓢図(無銘・後藤)
商品番号 :KZ-032
江戸中期 特別貴重小道具 桐箱入
60,000円
赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金色絵 銀露象嵌
長さ:9.67 cm 幅:1.43 cm 高さ:0.58 cm
最初手にしたときは葡萄の図かと思って実をよく見てみると、形が円形ではなく涙型のように丸味を帯びた出っ張りが。鑑定書には蔓瓢(つるふくべ)とあったのでルーペで確認してみたら、確かに瓢です。鈴なりに彫ってあるのでてっきり葡萄と勘違いしたようです。画題が瓢だからと鈍臭くはありません。洋風の構図が洒落ています。戸尻側の上部から広がっていく構図はよく計算されていて、作者のデザインセンスを感じます。中々大胆で思い切った構図は、現代の芸術感覚に通じるものがあります。あれ?、一番右端に彫られているのは幹(蔓)?・・・なくても良さそうですけど・・・指で隠してみたら構図に締りがありません。あくまで主観ですが、この幹が全体のデザインバランスを支えているようです。まさに根元(こんげん)です。
本作、時代は江戸前期の終りから中期でしょうか。後藤の極がついていますが、後藤家にしてはかなり大胆な作です。紋はおそらく鑞付の据紋。紋の周囲に、際を整えるために後から七子を打ち直した痕跡が確認できます。厚手の金色絵に銀の露象嵌、微細な七子といい、上手の作といってよいと思います。葉と蔓の彫も後藤の掟に沿っています。画題のデザインだけが後藤本家と極めにくいと思うのですが、鑑定書は特別貴重ですから改めて審査に出したらどんな極になるのか? 加賀後藤? 傍後藤? 時代的には京金工? ないとは思いますが古金工?・・・おっと失礼! まずは時代と品質、鑑定書は“あれば尚良し”のスタンスを忘れてはいけません。個人的には時代を江戸初期・古金工としたいところですが、ちょっと無理があるかも。