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小柄
砂金運搬図(無銘・古後藤)
商品番号 :KZ-033
江戸前期 保存刀装具 桐箱入
90,000円
赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀色絵 裏金板
長さ:9.82 cm 幅:1.45 cm 高さ:0.70 cm
紋がかなり高めで立体感のある高彫、いえ据紋です。こんな細かで複雑な構図も据紋にして作るとは感心します。据える前の目貫のような状態の時は、荷車の細い柄や縄のところが折れ曲がってしまいそうで、鑞付する時にはかなりの集中力と神経を使うでしょうね。一旦据えてしまえば、もう肉彫としか見えません。恐れ入る所作です。
この画題、人工(にんく)が金を運んでいる構図ですから、時代的には桃山期までは上げられないでしょう。なにせ人物が主役ですから。おまけに銀も多めに使われており、上記の鑞付据紋を考えれば江戸前期。ただ、高い紋の立体感と厚手の金・銀板を使用した袋着に近い色絵を考慮すれば、江戸初期まで上がるかもしれません。
それとは別に、ちょっと面白い所作が・・・裏に貼付けてある金板はあまり見ない造込で、普通は哺金の所作が一般的です。しかし本作はかなり厚手の金板をペロリと密着させた所作。後世の補修かもしれません。本作が作られた当時は哺金だったのが、剥がれたり擦れてしまったので金板を貼り補修した感じがします。哺金ならばヤスリ目が明瞭に出ていますが、本作ではヤスリ目が金板の下にもぐって、こもった筋に見えるのは、そのせいかもしれません。そう考えると、表の紋の金銀の色絵もその時一緒に施した可能性も出てきます。人物達の服の模様にしても、一人だけ取り上げても色絵がある個所ない個所が混在していて、最初から施した所作とは思えないフシがあるのです。もし、これが本当だったら真っ黒い無赤銅の小柄・・・それはそれでシブい作かも。ちなみに余計な話ですが、この額に中に十人の人物が登場しています。引手が七人、押手が二人、音頭をとる頭が一人。