長さ：9.69 cm　　幅：1.43 cm　　高さ：0.77 cm
哺金をぐるっと本体に施した袖小柄です。真黒い無赤銅の地板と紋が額内に収まり、２トーンの際立つ対比が鮮やかです。古い笄を仕立て直した笄直の袖小柄、紋自体が高く存在感があり、それが味わいというか古雅なイメージを作り出すのでしょうね。手にするとズッシリと重みを感じます。これは本体全部を哺金で覆っているだけではなく、笄の紋を削り出しているからで、鑞付据紋とはいえ無垢の塊を嵌め込んでいるのと同じです。金色で囲まれているのに華やかさは感じられません。代わりに重厚感漂う剛さがあります。言い換えれば、古の粋を現在に見せてくれる優品です。
それにしても贅沢な後世の加工で、袖本体全てを覆ってしまうとは思い切ったもので、漆黒の画題を活かすべく敢えてトライしたのでしょう。鑑定書には古後藤。笄だった頃の時代は桃山期は十分にあり、本体は江戸中期頃でしょうか。彫は大味に見えますが、実はかなり細かいところまで彫り込まれています。紋の左上にある紐の輪などは、結目までも丁寧に表現されています。そして道具は道具らしく、ごっつく見えるところがまた良いのです。