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小柄

小柄

葡萄図(無銘・古美濃)

商品番号 :KZ-049

室町後期 特別保存刀装具 桐箱入

300,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀露象嵌色絵

長さ:9.88 cm  幅:1.47 cm  高さ:0.69 cm
葡萄(おそらく山葡萄)の画題を唐草風にアレンジしてエキゾチックな構図にデザインした本小柄。見方によっては中東や西洋文化・美術の影響を受けたデザインと言えなくもありません。こうしたデザインは結構見かけますが、当時の金工たちの間で流行った表現方法の一つだったのは確かです。構図そのものは洗練されたイメージを見る人に与えます。大正ロマンならぬ現代でも十分通用するデザインと思います。これで数百年も前に作られているのですから、時代を超えて触発する感性の力は凄いなと感心させられます。
その葡萄の複雑なラインを鋤出風に彫り上げた本小柄の極は古美濃。鋤出風としたのは地彫ではなく鑞付の据紋だからです。据紋とすれば鋤出彫が特徴である古美濃という極め所の根拠が儚いものになってしまうのですが・・・七子の粒が紋によって半分隠れた箇所が随所に確認できるので、据紋とするかしないのです。まさか半欠けの七子鑚で蒔いたとか言わないでください。それに鑚が入らないような狭い箇所にも七子が蒔かれていたりもします。まあ、葡萄の図柄ですから美濃風で良いもかもしれません。 状態はとても良さそうですが、本来本作は笄だったもので、紋のある額を切り取って仕立て直した笄直の小柄です。作り直した際に随分と苦労したようで、眉形と縁の辺りは少し乱雑な加工痕が散見されます。七子の粒も不揃いな箇所が多く高級品とは言えませんが、細かな所作を別にして総体にみれば何とも魅力的小柄に思えます。似たような画題で、山銅の時代笄にある作と一緒にはできません。赤銅地に金と銀の露象嵌が施されていることも加味すれば、当時としてはそれなりの上手作だといえる一品です。時代は室町後期。桃山期と言えなくもありません。デザインのフォルム、そして彫の所作からの推測です。本体は江戸初期としたいのですが江戸中期まで下がるかもしれません。こうした極めも含めて本小柄を楽しんでいただけたら幸いです。

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