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小柄
福神図(無銘・古後藤)
商品番号 :KZ-055
桃山期 特別貴重小道具 桐箱入
130,000円
赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金袋着 裏哺金
長さ:9.64 cm 幅:1.40 cm 高さ:0.78 cm
手に乗せた途端、重い・・・小口の中からは麦漆か何かが詰まっていて確認できませんが、紋の立上りが急峻で裏から圧出した紋ではなく肉彫した紋のようです。ただし、半円形の七子が紋との接点に見てとれるので鑞付した据紋だということがわかります。この重さ・・・笄直の小柄だろうと疑って、まずは七子粒の確認。案の定、紋周りの粒の大きさと小口・戸尻側の粒の大きさが異なっています。よく見ると、ちょうど紋の両端の際に笄の蕨手と木瓜の名残の形状が確認できます。水平にして見ても、紋の両端から小口・戸尻に向かって緩やかに地板の面が下がっています・・・これで決まり、本作は笄直の小柄です。これで、重さの理由も納得。笄の紋を切り取って地板に仕立て直したのですから、重いのは当然です。
では時代は? 金の袋着ですから桃山期以前はあります。ただ、気になるのは画題の登場人物(人物と言って良いのかわかりませんが)。大黒は室町期からよく見る画題です。では恵比寿は?・・・余りというより当店では未見です。江戸期に入ってからならわかるのですが。確かに現在では大黒と恵比寿はセットで扱われることが普通ですが、当時はどうだったのでしょう。恵比寿だけが日本由来の神ということもあり、江戸期得意の創作によるものかもしれませんね。この観点は現代の視点で語ってはいけません。なので不甲斐なくこれで終了・・・理由は曖昧なまま、金袋着と笄直を盾に桃山期とさせていただきます。
・・・本当に恵比寿かって? 本小柄のそれも竿を持っているので恵比寿に違いないとは思います。大黒と恵比寿、ちょっと珍しい組み合わせの画題に、もう一匹、脇役が。ネズミの登場です。左端の米俵を狙っているようです。まるで大黒と恵比寿がネズミを追い払おうとしているかのように見え、意外に滑稽な構図です。ちなみに大黒は小槌を持っているのですが、恵比寿は竿だけで鯛(魚)を持っていません。その代わりではないでしょうが、波の乗っている図かもしれません。まさか当時はサーフィンなんてなかったはずですし・・・いや〜楽しめる構図です。みなさんも勝手に物語を妄想してください。