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小柄
三冊草紙図(無銘・加賀後藤)
商品番号 :KZ-060
江戸中期 保存刀装具 桐箱入
50,000円
赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀色絵
長さ:9.71 cm 幅:1.50 cm 高さ:0.60 cm
草紙を画題にしたあたりは少し文化を匂わせる切り口の本小柄。草紙ですから繁栄や富への願いを込めた意味合いではなく、学問や知識、位、品格などを意識した画題だと思われます。まさに安定した時代となった江戸中期頃の作を象徴するかのようです。小柄としては新しい区分に入ります(もちろん当店での区分です)。造も風合いも江戸中期以降を地で行く姿、構造は二枚貼の地板嵌込、紋は鑞付据紋で腰も低いのですが、代わりに保存状態は良く七子地も時代なりの減り具合。本作の画題は草紙が三冊の構成ですが、同じ図柄を用いた五冊のバージョンも現存しており、バリエーションもそれなりにあったはずです。かといって粗雑な数物ではありません。地金の色も黒く七子粒は細かく整然と撒かれています。
ここまでの所作と特徴から加賀後藤という鑑定書の極は妥当でしょう。加賀後藤でなければ、構図からして傍後藤か京金工に行くしかありませんが、何と言っても二冊に施された金色絵の象嵌が加賀後藤に極めた決め手だと思われます。草紙の表紙模様を丁寧に彫り込んで金を埋め込んである所作が見所で、表題の文字も彫られていることも面白い(何て書いてあるのか、平仮名? 漢字?)。ここまでやりながらもう一冊の金色絵と銀色絵は蒸着のようで、擦れた風合いが象嵌部分と同居している様は少し違和感を感じます。せめて焼付にでもしていたら、かなり映えた作になっていたと思われるのですが・・・・(後世の私たちが要望するのは筋違いですが)