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小柄
三羽烏図(無銘・古後藤)
商品番号 :KZ-065
江戸前期 保存刀装具 桐箱入
売約済
赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金色絵
長さ:9.68 cm 幅:1.41 cm 高さ:0.60 cm
烏が三羽描かれた本小柄、一羽は木に止まり、残りの二羽は(戯れ合いながら?)飛んでいる構図です。日常でよく見かける光景です。そんな何気ない光景を表現したいわけではないのは、皆さんも十分ご存知のはずです。知っている通り、昔は烏は瑞鳥です。これだけで画題としての資質はクリア。では構図はというと、三羽ですから一般的な見方では親子を描いた子孫繁栄か、雌をめぐる求愛バトル(これもある意味、子孫繁栄)でしょう。彫られた烏を見較べると、木に止まっている烏が他の二羽に比べて一回り小さく感じます。推測ですが、この三羽は親子でしょうね。もしかして、巣立ちの子烏を親烏が飛ぶように促している構図かもしれません。・・・そうか、だから木立が金で施されているのかも(子供は宝ですから)。このように自分勝手な解釈でも、イメージの捉え方は辻褄は合いますが、所作はそうはいきません。では造と作位を・・・
それなりに黒い赤銅地に、これまたそれなりに細かい七子。彫口もそれなりに良いのですが際立って上手いとは言えません。作位的には中より少し上ぐらいでしょうか。残念なのは目玉に金が施されていないこと。これが描かれていたら、随分と印象は変わっていたはずです。本小柄の鑑定書の極は古後藤。画題は烏なので後藤家に行くのは極めて自然です。ただ、古後藤にするほど古いかといえば、少し躊躇します。本家本元の濡烏ではないことを考慮すれば、それを元にした派生であり、後世の改訂・発展系のデザイン、つまり新しいデザイン案ではないでしょうか。案の定、紋も肉彫ではなく鑞付据紋です。鑞付据紋なので地金の構造は片手巻かと思ったのですが、少し重量があります。ならばと二枚貼の痕跡を探したのですが、どうもはっきりと確認できません。片手巻構造で鑞付据紋は未見なので少し期待したのですが残念。ただ、存在してるのに当店が確認・検証できていないだけかもしれませんし、正直、あると思っています。